THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 12/14


■妻の心

食後、再びリビングに戻ると、例によって世理子が差し入れてくれたワインを軽く飲んだ。

「しかし驚いたなぁ・・・ヨリちゃんが、外人さんといっしょになるなんて・・・」

「そう? でも彼なら料理うまいしね。・・・アタシ苦手な人でしょ、そういうの」

妻が口をはさむ。

「あら? でもおウチでは、やっぱり世理子が作らなきゃ・・・。仕事でもウチでも料理させられたんじゃ、可哀想よ。おウチでは、できるだけダンナさんを休ませてあげないと・・・」

「うーん」

「そりゃあ、世理子だってお仕事してるからわかるだろうけど・・・。大変なのよ・・・男の人のお仕事って。とくに家庭を持つとね」

宮田はふと妻の横顔を見た。妻の顔が、すごく優しく見えた。

「お義兄さん、しあわせじゃん!」

「何だ、ヨリちゃん、いきなり。・・・まぁ、そりゃあ・・・ね」

「アタシ、やっぱ仕事やめよっかなぁ・・・。ちょっと迷ってたんだけど・・・ね。せっかく家庭をつくるんだから、まず、そっちを優先するべき・・・よね。それに・・・」

「?」

「実は、もう赤ちゃんいるんだ、アタシ」

「本当なの世理子?!」

「ホントよ」

「じゃあ、お仕事どころじゃないじゃない!!」

さっきまで優しい顔つきをしていた妻の目がキッと世理子を見据えた。

「まぁまぁ・・・真剣に結婚することにしてるんだし・・・ヨリちゃんも、もう子供じゃないんだから」

宮田の言葉に、その表情はやや和らいだものの・・・妻は、また少しここ数日同様の不安な表情に戻って言った。

「世理子・・・お父さんたち、知ってるの? このこと」

「まだ話してない」

「まだってアンタ?!」

「・・・で、先に味方をつくっとこうと思って、おねえちゃんのところに・・・」

世理子は不敵な笑みをうかべた。ボブは大きな体をゆすりながら、ひたすらニコニコしているだけだ。


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