THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 11/14


■ポブの職業

宮田がリビングに戻ると、良樹がボブを相手に身振り手振りで何か必死に話しかけようとしていた。
そのわきで世理子が時折、口をはさんでは3人で大笑いしている。

宮田も良樹の隣に腰を下ろし、しばらく仲間に入っていたが・・・何を言ってるんだか、サッパリわからない。
みんなが笑うタイミングに合わせて、強引に笑って見せるだけだ。

隣のダイニングから、妻が顔をのぞかせた。
必死に宮田へ目くばせをしている・・・鍋の準備ができたようだ。

意を決して宮田は言った。

「アー、It's レディ。アー、Let's イート。アー、アー、フライパン・ディナー」

「フライパン・ディナー?」

宮田の言葉に3人が顔を見合わせた。
赤面する宮田が声をふるわせながら言った。

「ヨ、ヨリちゃん・・・鍋は英語でその・・・何て言ったっけな?」

それを耳にしたボブが大きな声を上げた。

「Oh! 鍋ネ。チャンコ、ワタシ大好キ!!」

それを聞いた宮田は、イッキに自信を取り戻しながら立ち上がった。

「そりゃーよかった。さ、さ、みんなで食べよう」

ダイニング・テーブルに移って鍋を囲む。
体の大きなボブは少し狭そうだったが、あいかわらず満身の笑みをうかべている。

「じゃ、まずは乾杯だ」

缶ビールをまわして、みんなのコップへ注ぐ。
ウーロン茶をつがれた良樹は、ちょっとガッカリしていたが・・・この場では仕方ない。

「えー、ヨリちゃん・・・そしてボブくん・・・でよかったよな?! ご婚約おめでとう!!」

「ありがとー!!」「Thank you!!」

ボブの箸の使い方は、かなり大ざっぱだったが、さすがに体が大きいだけあって、よく食べる。
やっぱり何でも食うヤツだ・・・と思いながら宮田は、尋ねた。

「ところでヨリちゃん。ボブくんとはどこで?」

「そういえば肝心なこと話してなかったわね。・・・撮影現場でいっしょだったの」

「ほぉ〜。すると大道具の仕事か何か?」

「キャハハハ、そう見えるけどね・・・違うの。料理の撮影があってね・・・彼、コックなのよ」

「コックさん?」

宮田と妻は同時に息を飲んだ。

「そう、ホテルでシェフしてんの」

「そ、それは、それは・・・」

宮田の予想は大きくハズレたが・・・。
とりあえずボブはおいしそうに食べてくれてるから・・・ま、いっかと胸をなでおろす宮田夫妻だった。


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