THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 10/14


■日本人妻の戸惑い

宮田が寝室で着替えをしていると、妻が小走りで駆け込んで来た。

「ねぇ、あなた」

「な、何だ?」

「どうしましょう?」

「どうしましょう・・・ったって、ヨリちゃんが決めたことなんだから今さら・・・」

「そうじゃなくて、お食事よ、お食事。・・・世理子ったら外人さん連れて来るなんて、一言もいわなかったから・・・お鍋しか用意してないのよ。どうしましょう? やっぱりハンバーグかステーキじゃないと・・・」

「いいんじゃないか? 鍋で。見たところ、何でも食いそうなヤツだし・・・。味にもうるさくは、ないだろ」

「そうかしらね」

「だってしょうがないだろ? それしかないんだから」

「それもそうね・・・じゃ、お鍋にするわ。そのかわり・・・」

「?」

「あなたが説明してよ・・・お鍋」

「説明? 説明って、オイ」

妻はそそくさと寝室を出て言った。

鍋・・・鍋って英語で何て言うんだ?
良樹の部屋まで行けば英語の辞書があるはずだが・・・。
リビングをわきを通過して上に上がっていくのも何だか不自然だし・・・。

鍋と聞けば、最近は三村の自宅で食べた楽しいひとときを思い出す宮田も・・・今は、そんな余裕などない。


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