THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 9/14


■カルチャー・ショック

「あ! 義兄さん。おかえりー! ・・・えーっとご紹介します。ボブ・リチャードソン」

「ハ、ハロー」

「Nice to meet you」

差し出された右手は、まるでグローブのようだ。
身長もさることながら、テップリと横幅もあるので、まるっきり巨人に見える。

「はは・・・」

力なく笑う宮田。

「ヨリちゃんの結婚する相手って・・・ひょっとして、こちらの・・・」

「そう! ボブよ。日本語はカタコトしかできないけど・・・なかなかイイ奴だから、よろしくね」

世理子たちとは反対側のソファーに腰掛けていた良樹が、宮田を見上げて苦笑する。

「す、すまないヨリちゃん・・・ちょっと着替えてくるから」

世理子が宮田の言葉をボブに通訳するとボブは満身の笑顔で言った。

「Oh! Please! Please!」

「すげぇな、世理子おばちゃん。英語ペラペラじゃん・・・知らなかったぁ」

良樹が目を丸くして言う。

「まぁねー・・・ってほどじゃないけど。・・・愛を語れるくらいはね」

世理子がウインクして答える。

宮田は表情を失ったまま、ひとまず寝室へと向かう。
すると、後ろから妻が声をかけた。

「あなた!」

「ホワット?」

うっかり英語で答える宮田。

「・・・うがい、まだですよ」

「オー、ミステイク」

宮田は洗面所に戻って、うつろな目でうがいを5回した。


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