THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 8/14


■世理子の結婚相手

約束通り、宮田は早めに家路についた。
道々、いったい世理子が連れてくる相手は、どんな男だろう?・・・そればかり考えていた。

世理子はフリーカメラマンだから、相手はやっぱり広告関係の人間か?

最もその世界のことは、まったく知らない宮田にとって思いつくりのは・・・コピーライターくらい。
しかし、カメラマンとコピーライターが仕事の上で、どう結びつくものだか、さっぱりよくわからない。

もしや広告代理店の営業・・・?
いやいや、実力主義の世理子のことだから、よほど力のある者でない限りサラリーマンなど相手にしないかも・・・。

と、ここまで思いめぐらせたところで、自分がサラリーマンであることに、ちょっとだけ後ろめたさを感じたりもしていた。

別に世理子が結婚する相手なんだから、どうでもいいことなんだが・・・。
でも、今後親戚づきあいをすることになるだろうから・・・できれば相手は自分が理解できる立場の人間であった方が・・・何かといいに決まってる。

家が見えた。

世理子のことだけなら家に帰るのは楽しみなんだが・・・。
まだ、家族と顔を会わせるのは・・・正直言って何だか気が重い。

むしろ世理子が来ているせいで、気をつかってでも会話ができるようになれば・・・。
やっぱり助かることになるだろう。

玄関を開くと、奥から大きな笑い声が聞こえてくる。
世理子の声だ。
宮田は「お! 来てるな」と思うと同時に「案の定、正解だ」と少し胸をなでおろした。

「お帰りなさい」

妻が出迎える。その表情は、やや困惑した感じに見えた。

「ああ・・・ただいま。・・・どうした? 来てるんだろ? ヨリちゃんと・・・彼氏」

「え、ええ・・・」

鞄を妻に預けて、世理子の声がするリビングに顔を出す。

「いゃあ、いらっしゃ・・・」

「Hello!!」

立ち上がったのは長身の宮田も見上げるほどの大柄な黒人男性だった。


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