THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 6/14


■世理子の爆弾発言

夕べ以来・・・家族はまともに会話を交わしていない。

ただ、決められた時間通りに宮田は会社へ行き、良樹は学校に向かった。
ひとり残された妻、裕美子はダイニングテーブルで大きくタメ息をついた。

その日の天気は裕美子の心をうつしたような曇り空。
ちょうどいい・・・動く気もしないから、今日は洗濯もやめにしよう。

かと言って、今のままの状態でいるわけにもいかない。

思い立った裕美子は、ひさしぶりに妹の世理子に電話をかけることにした。
前に良樹のガールフレンドのことでモメた時も世理子が助けてくれた。
妹に頼るのは、ちょっとシャクだったが、そうこう言っている場合ではない。

フリーカメラマンの世理子が自宅でつかまることは、まずない。
携帯電話なら大丈夫なはずだ。

「もしもし」

「あ! 世理子? ・・・おねえちゃんだけど、今、大丈夫?」

「めずらしー! うん、大丈夫。元気?」

「・・・・」

「また、何かあったんでしょう?」

世理子は、あいかわらず勘がいい。
最も勘がいいくらいでないとフリーのカメラマンなどやっては食べていけない。

「忙しいところ悪いんだけど・・・ちょっと相談にのってくれるかなぁ」

「いいよー。・・・あ、そうそう、アタシもちょっと相談・・・というか報告と言うか・・・会ってほしい人がいるの」

「会ってほしい人? それって、まさか」

「ピンポーン!! おねえちゃんもだいぶ勘が良くなったね。・・・結婚するの、アタシ」

「えーっ?! お、おめで・・・とう」

「じゃ今夜でも行くわ。ちょうど彼と会う約束してるから」

「今夜?」

「だって早い方がいいんでしょ?」

「それは・・・そうだけど・・・」

「じゃあ、今夜ねー」

世理子はそう言って電話を切った。

妹が結婚相手を連れて来るとなると・・・こっちの相談どころではない。
いや、それどころか、これ以上心配のタネが増えなければいいんだけれど・・・と裕美子はちょっと思った。


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