THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 5/14


■暴力亭主

次の瞬間、宮田は

「なんだと! コイツ!!」

と言うなり良樹の頬を思い切り、ひっぱたいてしまった。

「何すんだよ! いきなり!!」

「・・・おまえ、人の気も知らないで」

宮田にとっては本当は自分の気持ちを指していたが、取りようによっては、お守りを送ってくれたおばあちゃんの気持ち・・・ともとれる言葉だ。

しかし、良樹も負けてはいない。

「人の気持ちがわかんないのは、どっちだよ!」

そう言って、お守りを投げ返す。

「馬鹿野郎!! 何てことするんだ!」

2人の怒鳴り合う声に驚いた妻が、あわてて部屋へ駆け込んで来る。
つかみ合う宮田と良樹の中へ割って入ると泣きながら叫んだ。

「やめて! 2人ともやめて!!」

良樹は再び机に向かって頬づえをつく。
引き離された宮田は、荒々しく肩で息をしていた。

「どうしたのよぉ・・・いったい?!」

「とうさんが悪いんだからな! 先に手を出したんだ」

「な、なんだと。お、おまえが人の気持ちを・・・」

そう言いながら、また良樹の肩をつかもうとした宮田を妻は必死で止めた。

「やめてよ! もう!! あなた!!」

宮田の肩はあいかわらず、大きく上下している。
妻は悲しそうな声で言った。

「あなた・・・。あなた、いつから、そんな暴力亭主になっちゃったんですかぁ」

それを聞いて、良樹の部屋を飛び出した宮田は・・・洗面所に向かうと、思い切りうがいを5回した。


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