THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行19 2/14 |
■見えないロープ 「良樹が・・・高校受験やめるって・・・もう! 私どうしていいのかぁ・・・」 そう言いながら、玄関先で泣き崩れる妻。 思えば夕べは宮田が妻を泣かしてしまった。勢いとは言え、つい初めて手を出して・・・。 そして今夜は息子のせいで、母として涙を流している妻。 宮田は自分も当事者でありながら、そんな妻がものすごく不憫に思えてきた。 見ると妻の手には紫色のお守りがシッカリと握られている。 「どうしたんだ? そのお守り」 「北海道のおばあちゃんが、わざわざ九州にいるお友達に頼んで・・・太宰府のお守り送ってくれたのよ」 「・・・そうか」 「良樹に持って行ったら、いらないなんて言うから・・・なんで?って聞いたら、受験しないからって・・・」 「何で?」 「知りませんよぉ・・・そんなのぉ・・・ああ、私もうイヤ!」 妻は、まるで目に見えないロープでも振り払うように、大きく首を左右に振った。 「そう投げやりになるなよ・・・」 そう言いかけた宮田は、あらためて妻の首を絞める見えないロープの1本が自分であることを思い出して 「そう投げやりにならない方がいいんじゃないかと・・・思う」 と言い直した。 「とにかく、俺が良樹と話すから」 「そうしてください!」 「もちろんだ」 「うがいの前にですよ」 「・・・ああ、すぐに」 「大切なことなんですからね!!」 「わ、わかってる」 宮田は妻の手から、太宰府のお守りを受け取ると、そのまま階段を上がって良樹の部屋へと向かった。 |