THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 3/14


■人生の壁

良樹は机に向かって頬づえをついていた。

昔からスネるといつも、このポーズをとる。
小さい頃は「あんまり頬づえをつくとアゴの骨が伸びるぞ」と注意したものだが・・・。
もう、ぼちぼち顔の骨は固まってきたに違いない。靴のサイズも自分より大きくなったし。

「おい、良樹」

「なぁに?」

良樹は顔も向けずに答えた。

「おまえも、もう大きいんだから・・・かあさんを泣かすようなこと、するなよ」

良樹はなおも顔をそむけたまま言った。

「・・・説得力ねぇな」

ウッ!・・・と一瞬、宮田は言葉に詰まったが、ここで息子にたしなめられては父親としての威厳を保つことはできない。

「子供といっしょにするんじゃない! 今、とうさんは仕事の上で、いろいろと大変な時期なんだよ。だから、かあさんと多少意見がズレることだって・・・あるんだ」

「・・・・」

「良樹・・・こっちを向けよ」

息子はゆっくり椅子をまわして、宮田の方を向いた。

「何でやめるんだ? 高校受験」

「だって・・・わかんなくなっちゃったんだよ。どうして今、勉強しているのか・・・」

「どうして・・・って、今勉強しなきゃ将来・・・」

「将来って言ったって、今の俺には将来どうしたいっていう具体的なこと、何もないし。それもわかんないのに、みんなが高校行くからって・・・ただ、それだけの理由で勉強してても・・・意味ないじゃん」

「そんなことは、とりあえず高校に入ってから、ゆっくり考えればいいだろう?!」

「でも義務教育は中学まででしょ? 高校は自分の行きたい方向に行くために入るんじゃないの?」

「そりゃまぁ、そうかも知れんが・・・。現実的には高校の進学率はほぼ100%だし、今や義務教育といっしょだ」

「じゃあ、まわりに合わせろってこと? ・・・わかんねぇなぁ俺」

正直、言って宮田にも・・・ハッキリとはわからなかった。


Next■