THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行18 14/14


■またまた大混乱

午後6時。このまま家に帰るには早すぎる時間だ。
もちろん早く帰れるのに越したことはないのだが・・・まだ、妻への釈明を考えついていない。

バスに乗れば、すぐに着いてしまうところだが、歩いて帰ることにした。
クミの話を聞いたせいか何となく元気をとり戻せたような気もする。
外の風は冷たかったが、普段は歩くことのない長い距離を歩いているとやがて体も温まってきた。

そもそも自分は何をしたかったのか?
良樹やクミの年代の時に考えていたことは何なのか? 自問自答してみる。

とにかく田舎から出たいと思っていた。
東京のような都会に行けば、何かが見つかると思っていた。

自分より一歩先ににオヤジの会社の事業進出の都合で都会にそまった木下は、大学になって都会に出てきた宮田に比べると、はるかに遊び上手になっていた。
それをうらやましく思った時期もあって、しばらくの間は疎遠になってしまったが、今思えば、それは木下の方がはるかに小遣いが多かっただけのことだ。

都会は金をたくさん稼げるところであると同時に金をたくさんつかわされるところ・・・でもある。
まるで一年中、祭りでもやっているような・・・。
だけど、それも慣れてしまうと、もうどうということはない。

最初から都会に生まれ育ったクミは、あの歳で、もうそれに気づいているのか?
しょせん自分は根っからの田舎者で、この歳になってもまわりの環境についていくだけで精一杯なのか?

ひょっとして、三村との関係を積極的に進められないのも、まわりに合わせようとすることしかできない自分の不甲斐なさからなのか・・・。
最も、そんなところではりきったところで後々大変なことにはなるだろうけれど・・・。

すでに環境を選べる年齢ではない。
やはり今となっては家族の幸せだけを考える・・・べきだろうな。

家に着いてしまった。

今夜は妻に謝ろう・・・素直に。それしか手はない。
覚悟を決めた宮田は玄関のドアを開けた。

すると、階段の上から妻と良樹の怒鳴り合う声が響いてくる。これは、ただごとではない。
とにかく様子を見に上がろうとすると、バタバタと階段を誰かが下りて来る音がした。

妻が泣きはらした目をして宮田を見た。
夕べと同じ目だ。
ドキッとした宮田が静かに聞いた。

「どうした・・・いったい?」

「良樹が・・・高校受験やめるって・・・」

「どうして?!」

「知りませんよぉ。もう! 私どうしていいのかぁ・・・」

そう言って、その場に泣き崩れる妻を両手で支えた宮田には、これで夕べの一件はウヤムヤになった・・・と思う余裕すらなかった。

・・・以下、次週

2000年1月30日(日)掲載予定

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