THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行18 6/14


■毒物劇物取扱責任者

異動先であるジェイピー物流の現状について大まかな説明が終わると会津は、かけていた銀ブチ眼鏡をグッと上げながら言った。

「・・・それでねぇ、宮田さん。宮田さんの化け学のキャリアを活かすお仕事として、部長さんからもお話があったと思うんですがね。当社の毒物劇物取扱責任者をお願いしたいんですわ」

「うかがっております。・・・私にできることであれば」

「もちろん、できますとも。宮田さんの学歴であればね。ただ、厚生省への届出のために健康診断を受けてほしいんですわ」

「健康診断?」

「もう、お役所のことですから本当に形式的なことなんですけどね・・・。当社として宮田さんを毒物劇物取扱責任者として届出し直すために、ご本人の健康診断書が必要なんです。・・・内容は薬物・・・つまり麻薬を使っていないかどうかという簡単な検査だけなんですがね。麻薬患者が毒物扱ってたら、ひじょ〜にコワイでしょ?! ・・・この用紙に、最寄りの保健所で記入していただければ結構です」

手渡された用紙には、こんな文章が載っていた。
『上記の者は、精神病者又は麻薬、大麻、あへん若しくは覚せい剤の中毒者、口がきけない者、耳が聞こえない者、目が見えない者又は色盲ではない。上記のとおり診断する』

用紙を見つめる宮田に人事部長が声をかけた。

「これから、いろいろと整理しなきゃなんないことも多いだろうから・・・早めに行っておいた方がいいぞ。宮田くん」

「は、では早速・・・明日にでも」

「おいおい、できることは今日にでもやりなさいよ。・・・キミの自宅は」

「川崎です」

「それなら大きな保健所もあるだろう? すぐに電話で問い合わせて、今日、受け付けてもらえるんなら早引きしても構わないから」

いよいよ自分はこの会社から追い出されるんだ・・・そんな実感が宮田の胸をしめつけた。

「わかりました。それでは問い合わせてみることにします」

「まず問題はないだろうけれど・・・いや、問題があっては困るんだが。診断書が即日もらえるものかどうかもわからんし。万が一健康診断の結果に何かあったら、すぐに対策を練らなければならんからな、会社としては」

「・・・・」

つまり、健康診断の結果次第ではクビ・・・?!
もちろん麻薬などやっていないから何もビクビクすることはないのだが・・・それにしても嫌な感じだ。


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