THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行17 12/13 |
■守るべきもの すっかり飲み過ぎてしまった。 最後は2人とも、まるで学生時代に戻ったようにヘベレケになりながら飲みまくっていた。 川崎駅での別れ際、切符を買うために取り出した木下のサイフから何かが舞い落ちた。 見ると、ひとり娘の写真だった。 宮田は、そんな木下を見て何とも言えない気分になった。 遠くに自宅の明かりが見えてくる。 真っ直ぐに歩いているつもりなのに、なかなか明かりは近づいてくれない。 2階の明かりは・・・息子の良樹が受験勉強をしているに違いない。 こいつが一人前になるまでは、どんなにつらくても仕事を辞めるわけにはいかない。 そして、この家のローンだって・・・まだまだ残ってるし。 しかし・・・カミさんには何て言えばいいんだろう? ありのままを話すしか・・・方法はないんだが。 「あら、お帰りなさい。飲んでいらっしゃるの?」 「ああ、木下と会った」 「木下さん。・・・どうでした?」 「離婚・・・決めたと言ってたよ」 「そう・・・。お子さん、いらっしゃったわよね?」 「うん、まだ5つ・・・今年、小学校って言ってたったけな・・・」 上着を脱ぎながら、ダイニングまで来た宮田は重たい荷物を下ろすように、ドッカリと座り込んだ。 「・・・水、くれないか?」 「はい」 差し出された水をイッキに飲み干した宮田は大きくタメ息をついた。 「実は・・・大事な話があるんだ」 「何? あ! それよりあなた、うがいは?」 「うがいより大事な話なんだ」 「あなたがうがいより大事なんて・・・珍しい」 妻はクスッと笑った。 と、その時 「笑いごとじゃない!!」 思わず宮田が怒鳴った。 |