THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行17 9/13


■3台目の車

20分ほどして会社の前まで出てみると、4トンくらいのトラックが横付けされている。

これじゃあ木下が車で来ても止める場所に困るな・・・と思いかけたところへ、そのトラックから作業服姿の木下が降りて来た。

「よう! 宮。久しぶり! 年末には世話になったな」

「どうしたんだ、このトラック?」

「バイト・・・でな。正社員にならないと社会保険にも入れないけど、今、運送屋も厳しいじゃん。だから、当面は契約社員・・・ってことで」

「・・・そうか」

「10トン車の持ち込みでもできりゃあ、もう少しワリのいい仕事もとれるだろうけど・・・。車買うどころじゃないし・・・。でも、大型免許の教習には通ってるんだぜ」

「・・・・」

年末に会った時より、はるかに元気そうな木下の顔を見て、宮田はひとまず安心した。
首にかけたタオルで額を拭きながら木下が言った。

「さて、じゃあ行くか」

「行くって、このトラックでか?」

「もちろん。とりあえず営業所に車戻しに行くの、つき合えや。蒲田だから・・・そっから川崎あたりで一杯どうだ?」

「ああ、それならウチから近くて助かるが・・・。おまえは今、どこに住んでるんだ?」

「・・・だから蒲田。営業所の2階」

木下は、そう言ってトラックの運転席に上がった。
宮田も助手席にまわってドアを閉めた。

木下の運転する車に乗せてもらうのは、これが3度目になる。
最初は黄色いカウンタック・・・そう、今トラックが通り過ぎた、ちょうどこのあたりで。
2度目はベンツ。あの時はカミさんもいっしょだった。

そして、゜3度目の今日は、この4トントラック。
これまでの車と比べるとシートは板のように堅いが、見晴らしは一番いい。


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