THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行17 7/13


■任務完了

料理が運ばれてきた。

「とにかく食べよう」

宮田は、そううながしてナイフとフォークを手にした。
ずい分、早く来たと思ったら・・・完璧なレトルトだ。高い料金とっとっいて。

「うまい!」

鈴木が珍しく元気のいい声で言った。
まるで子供のようにハンバーグを頬張っている。
宮田にとっては接すれば接するほど、わからない男だ・・・この鈴木という男。

食後のコーヒーすすりながら、再びボソボソとした口調に戻った鈴木が宮田に聞いた。

「課長、リストラですか? ボク。・・・正直に言っていただいて構いません。覚悟はできてますから」

「おいおい、結論を急ぐなよ。・・・そこまで言われたら話すしかないが・・・。キミだけの問題じゃないんだ。まだ内密にしておいてもらいたいんでが・・・うちの課は今期いっぱいで閉鎖されることになった」

「・・・・」

鈴木は顔色ひとつ変えずに、あいかわらずボーッとした表情で聞いている。

「そこで、いろいろと人の問題があって・・・。実は私もジェーピー物流へ行くことが決まったんだ」

「・・・で、ボクは? やっぱりリストラですか?」

「いや、まだ正式発表ではないんだが・・・」

「リストラですよね?」

「・・・・希望退職をお願いしたい」

まさか、ここまでイッキに話すことになろうとは考えてもいなかったが、こう突っ込まれると宮田としても逃れようはない。

「・・・鈴木クン・・・すまん」

「いいんです、ボク」

「え?」

「どうせ間違って入ってきちゃったようなもんですから。ハッキリ言っていただいた方が気が楽です」

「・・・・」

「課長!!」

「な、何だね? 鈴木クン」

「・・・ごちそうさまでした」

最後まで鈴木の顔色が変わることはなかった。


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