THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行17 6/13


■任務遂行

少し遅れて昼食に出ると、近くの店はどこもいっぱいだ。
安いところから順番に列ができている。

さっきの今で、リストラの話をすぐに切り出せるとは思えなかったが、思えばこの鈴木という男ともゆっくり話したことはない。
ここは任務遂行のために多少の自腹ははたいても落ち着いたレストランにでも入るべきだ。
席が空いているレストランはランチでも1500円はする。・・・まぁ仕方ない。

腰を下ろすと宮田はすぐに注文をした。

「ランチ・・・2つ。で、いいよな?」

鈴木はメニューをなめまわすように見ている。メニューに記載されているのは、どれも2000円以上の料理だ。

「鈴木クン? ランチでいいね?!」

ようやく顔を上げた鈴木が答えた。

「はぁ、ランチでいいです」

「じゃあ、ランチを2つ」

「課長・・・課長はいつも、こういうところでお食事されてるんですか? すごいなぁ」

「いつもじゃないよ、いつもじゃ。この間は席で弁当食べてたろ? キミもいたじゃないか」

「あ! ああ、そうですね。じゃあ何で今日はこんな豪華なところへ? しかもボクなんか誘って」

宮田は少し言葉につまった。

「・・・たまには、と思ってね」

そう言って水を飲んだ瞬間、鈴木が言った。

「人事部から、何か話でもありましたか?」

「ブッ!」

宮田はハンカチで口元をおさえながら聞き返した。

「何だって?」

「人事部長に・・・呼ばれたでしょう? やっぱりボクの話ですか?」

「・・・・」

宮田は不思議な物体を見るような目つきで鈴木をしばし見据えてしまった。


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