THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行17 4/13


■つらい任務

「あの・・・人事部長」

「何かね?」

「私の後任には・・・誰を?」

「ウム・・・その件で、もうひとつキミには頼みがあるんだ」

「?」

「まず、キミの質問から答えよう・・・。キミの後任は、いない」

「と、申しますと?」

「つまり資材調達課は今期限りで閉鎖する」

「!」

「一部、客先の都合で継続しなければならないものについては、化学品と同様にジェイピー物流へ委託・・・つまり、キミは勤務先は変わっても仕事の内容は、今とほとんど変わらない・・・というわけだ」

「・・・そうですか。・・・で、もうひとつの頼みと言うのは?」

「閉鎖にともなう、人の問題。すでに上層部の意向は固まっているんだが、キミに当社最後の資材調達課長として、この人の問題を解決してもらいたい」

人事部長は1枚のコピーを宮田に手渡した。
そこには宮田の部下の名前が列記され・・・異動先が示されている。

「異動先が記入されていない者が何名かおりますが?」

「・・・わかるだろう? ないんだよ、受け入れる先が。いや、本来はもっと厳しいんだ。だから、たとえ異動先が書かれている者でも辞めてもらえるのなら一人でも多く辞めさせてほしい」

「・・・・」

宮田はジッとメモを見つめ続けた。

柳俊雄の異動先は大阪支社になっている・・・これは、これでいいかも知れない。自分と三村にとっては・・・いやいや、そんなことを考えている場合ではない。

男性社員の中で異動先が空白になっているのは、愛妻弁当の鈴木だけ・・・これも仕方ないかも知れない。

但し、女性社員の欄には、誰一人として異動先が記入されていなかった。
三村しよりでさえも・・・。

人事部長が話を続ける。

「女性社員については受け入れ先は何とかなるだろう・・・。会社にとっての経費負担も正直言って低いし。問題は男性社員だな」

三村のことを思うと少しだけ安心した宮田だが・・・。
そう言われてしまうと、もうこれは名指しでコイツを辞めさせろと言われているのに等しい。

「いろいろと準備もあるので、課の閉鎖と、少なくとも主力となる男性社員の異動については2月の上旬には正式発表するつもりだ」

「もう半月・・・ですね」

「その間にキミの異動準備と空欄の社員についての打診をくれぐれもよろしく頼むよ」

「・・・わかりました」

やっぱり宮田にできる返事は・・・これしかない。


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