THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行16 9/9


■妻の根性

「どうでした?・・・大林さん」

寝床に入った妻が聞く。両手を頭の後ろに組んだ宮田は天井を見つめたまま答えた。

「やっぱり・・・ちょっと寂しそうだったな」

「人生のほとんどを過ごした会社を辞めたんですものね。無理もないわね」

「おまえは会社辞める時・・・どんな気持ちだった? 俺は会社辞めたことないからなぁ」

「どんなって・・・。私の場合は3年しかいなかったし・・・」

「たとえ3年だろうと、さんざん悩んで就職した会社だろう?」

「そりゃあ悩みましたよぉ。社会に出るわけですから・・・。ちゃんとやっていけるのかどうか不安で」

「まぁ学生から見れば会社なんてものは、わかるようでサッパリわからんからなぁ。悩んだところで働いてみなきゃわかるはずもない。会社に入ってから勉強することの方が多いからな・・・実際」

「それに、私が会社辞める時には、次の生活のことで頭がいっぱいでしたから」

「次の生活?」

「あなたとの結婚よ」

「そりゃそうだ。永久就職だからな」

「アラ、別に私はあたなに雇われてるなんて、これっぽっちも思ってませんよ」

「そ、そうは言ってないよ」

「私は内勤。あなたは外勤。でも、私だって株式会社宮田家の経営者のつもりですから」

「も、もちろんさ」

「できあがった組織で働くより、自分たちの力で作り上げる組織の方がずっとステキよぉ・・・ね?!」

「・・・それなりの苦労もあるけどな」

宮田のひと言で2人は沈黙してしまった。
その時、お互いの脳裏に浮かび上がってきた記憶は、ほんの少しずつ違っていた。

・・・以下、次週


    いよいよ次週からは最終章に突入!!

    あいかわらず何ひとつ問題は解決していない・・・宮田をとりまく環境はどう終演を迎えるのか?!

    第17話「左遷」・・・2000年1月16日(日)掲載予定、乞うご期待!!

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