THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行16 7/9


■三村の結論

日を追うごとに昼休みのバレーボールの参加人数は増えていった。
昼休みを終えて駐車場のわきを通りかかる社員たちが、みんなが楽しそうにボールをまわしているのを見て仲間に加わってきた。

結局、今の連中だって本質的には昔といっしょだ・・・ただ、こういう場がなかっただけのことだと宮田は思った。

課の雰囲気が何となく明るくなってきたことに宮田は満足していたが、それにしてもわからないのは三村の気持ちだ。まるで何事もなかったように柳と接してる。

ひょっとして、すでに柳とは・・・。いやいや、そんなはずはない。このところ柳は連日、取引先の新年会にかり出されて毎日帰りは遅いはずで、2人で会う時間などあるはずがない。

そう考えると、もっとわからないのは・・・柳の体力だ。いくら若いとは言え・・・。

宮田の携帯電話に三村からの連絡があったのは、宮田がひとりで残業していた時のことだった。

「まだ会社にいらっしゃったんですか?」

「ああ、急なオーダーが入ってね・・・年末のうちに言ってもらえれば、こんなにあわてることはなかったんだが」

「お疲れさまです。・・・あの、課長。お忙しいところすいませんけど、今度の週末。お時間いただけないでしょうか?」

待ってました! と思った宮田だが週末には大林元専務との約束がある。今度ばかりは延ばすのも失礼だ。

「すまん。約束があるんだ・・・年末に辞めた大林さんとねぇ」

「そうですか・・・」

来週なら、と宮田が言おうとした瞬間、三村が話を続けた。

「それじゃあ・・・実は柳クンのことなんですけど・・・」

「柳! ヤツがまたキミに何かしたのか?!」

「いえ、そうじゃないんです。・・・いろいろご心配おかけしてると思うんですが、気になさらないでください」

「・・・と言うと?」

宮田は息を飲んで聞いた。

「別にその後、彼と話したわけじゃないんですけど・・・。悪い人じゃないと思うんです、彼。ただ、あの時は課長のおっしゃる通り疲れていただけで・・・」

「そうさ! そうだとも」

「それにまだ私・・・結婚ってどういうことか考えられないし・・・。柳クンも今まで通りにしてくれてますから、このままでいいと思ってるんです」

「ああ、わかった」

「それじゃあ、大林さんに、くれぐれもよろしくお伝えください」

「伝えておくよ」

電話を切った宮田は内心ホッとした。だが、三村の言葉を聞いて安心する自分にほんの少しだけマズイとも思った。

「わかりました空けておきます」

元専務の後ろ姿をフェンスごしに追った宮田が振り返ると、三村と柳が2人でバレーボールを続けている。
時折、明るい笑い声を上げながら・・・。

何だ、あの2人ずい分気が合ってるじゃないか・・・宮田は言いようのない疎外感を感じずにはいられなかった。


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