THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行16 5/9


■いつもの顔ぶれ

弁当は20分ほどで食べ終わった。もう一杯、お茶を汲みに立とうと思った宮田だが、もしバレーボールをやりに集まる部下たちがいるといけない・・・と廊下に出るのはためらった。

わきに置いたバレーボールの空気を確かめながら、しばらくその場でボールをついたりする。ポンポンという音が妙に響き渡った。

今のところ誰も来る気配はない。
考えてみれば休み明けだ。昼休みの自由時間に休みの間の話で盛り上がるということもあるだろう。

しかし、せっかく今朝はああいう話をしたんだから、このまま風化させてしまうのもシャクだ。
実際にバレーボールをしていれば仲間に入る者もいるかも知れない。
だが、見渡しても・・・鈴木しかいない。

まぁいい・・・とりあえず宮田は鈴木に近づいて声をかけてみることにした。

「鈴木くん、どうかね? ひとつ」

鈴木は、まだ食事中だった。みかんの白いところを几帳面にとっている最中だ。

「すいません。まだ終わらないので」

「それは、すまん」

仕方なく席に戻ると、廊下の方からキュウスを持った三村が入ってくるのが見えた。

「課長、すいません。お弁当にしたって言ってくだされば、お茶くらいお入れしたのに・・・。いかがですか? お茶」

「お! ありがとう」

このお茶を飲んだら三村をバレーボールに誘おう・・・彼女ならきっと付き合ってくれる。
三村の入れてくれた暖かいお茶をすすりながら、心まで温まった思いでいると・・・。

「課長!」

・・・柳だ。

「課長! やりましょう!! バレーボール。急いでメシ食ってきましたから」

こういうことには飛びきり得意な男がいることを宮田はすっかり忘れていた。


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