THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行16 2/9


■混乱の年明け

1月5日の初出勤までの間、宮田は自宅にこもってひたすらアルバムの整理をしていた。

ボーッとしてると、つい現実の問題が頭を征服してしまう。何かに没頭していないと、いても立ってもいられなくなる。

三村にプロポーズをした柳は決して悪い奴ではない。むしろ馬鹿と言ってもいいくらい素直な男だ。

「責任とって三村クンと結婚します!」

そう叫んだ柳に

「・・・まぁ、まぁ。そんなに結論を急ぐなよ。きっと疲れてるんだよ。キミは」

と、やや震えた声で言ったものの、ここまで開き直られるとどうしていいのかわからない。
三村は黙ってうつむいたままだ。

「いえ、疲れてなんかいません! ハッキリわかったんです、自分のことが」

「そうは言っても結婚なんて、自分ひとりで決められるもんじゃないだろう?」

宮田はここまで言いかけたが、このまま話の論点をそっちの方向に持っていっては三村に決断をせまることにもなりかねない・・・そう思って、こう続けた。

「だいたい責任をとるってことが、何で結婚ってことになるのかね?」

直立不動の柳は、ようやく頭を下げながら答えた。

「しかし課長・・・。自分で言うのも何なんですが、彼女がキズついてしまったと言うんなら、その責任をとるのがスジってもんでしょう?」

「だから、どうしてキスしたら即、結婚なんだって?! キスくらいで・・・そうだろう?」

「じゃあ課長は、どこまでなら責任とらなくていい範囲だとお考えなんですか? セックスしなきゃいいんですか?! 何やっても」

「そ、そうは言っとらんよ・・・しかし、お互い大人なんだし」

「大人だから結婚です。責任をとれる年齢ですから、俺だって」

「・・・・」

「それに・・・本気なんス、俺」

こうなると、さすがの宮田も体育会系の男には返す言葉がない。
しばらくの沈黙があって、ようやく当人の三村が口を開いた。

「課長・・・。それから柳くんも・・・ごめんなさい。私やっぱり田舎から戻ってきたばかりで疲れちゃったみたい・・・。お先に失礼します」

あわてた宮田は思わず声をかけた。

「そ、そうだったな・・・。こっちこそすまん。・・・送ろうか?」

「いえ、ひとりで帰りますから」

「・・・そうか。そうだな」

三村が事務所を去った後、宮田と柳は別々のエレベータで会社を後にした。


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