THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行15 11/11


■体育会系男の決断

応接室の隅に寄せてあった長いソファー・・・そこから一升瓶を抱えた柳が起きあがったのは、次の瞬間だった。

「柳!!」「柳クン!!」

宮田と三村は目を丸くして叫んだ。
一方、上体を起こした柳の目は・・・まだ死んでいる。

「岡崎ぃ〜、今何時ぃ〜?」

「柳!! そんなとこで何してんだ、おまえ!!」

立ち上がった宮田が駆け寄る。
その怒鳴り声に一瞬顔をふった柳は宮田の顔を見上げて息を飲んだ。

「か、課長?! 何でここに・・・。あ! 三村クンまで?! どうなってんだ? 岡崎たちは?」

「どうなってるんだか、こっちが聞きたいね。さっさと起きたまえ!」

柳は乱れきった服装を直しながら、ようやくソファーから這いずり出てきた。が、本人にはまだ今の光景が悪い夢でもみているようだ。

「すいません! エンジニアの人が来て、システムが無事だったんで・・・みんなとちょっと一杯やっちゃって・・・」

「そんなことは、どうでもいいんだ。・・・柳クン。キミはこの暮れに、三村クンをずい分キズつけてしまったそうだね?! どうなんだ?」

「キズつけるなんて、そんな・・・」

身を小さくした柳を前に、三村はつい、そうなことを口走ってしまった。
しかし、宮田の剣幕はおさまるところを知らない。

「キズついたんだろう? 三村クン?! ハッキリ言ってやればいいんだ! キズついたから相談したかったんじゃないのかね?」

「それは・・・まぁ・・・そうなんです・・・けど」

「とにかく、柳クン!! これはセクハラ問題だよ」

「セクハラ問題? ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ。俺は真剣に・・・」

「何が真剣なもんか! 真剣な男が会社で酒飲んで寝込むのか? え?!」

「そ、それは・・・すいません」

「すいませんじゃすまんよ!! セクハラ問題といえば犯罪だ! え?! どうやって責任をとるつもりなのかね?! 西暦2000年を迎えたばかりだって言うのに!!」

もはや自分で自分の言っていることに興奮している宮田は支離滅裂だ。三村にしても自分のことを思ってくれているからこその宮田の態度に水をさすわけにもいかない。

神妙な空気が流れる。
やがて、まるめていた背中をピンとはって柳がハッキリとした口調で言った。

「わかりました。責任とります」

宮田と三村がハッとして柳を見る。柳は天井を見つめたまま続けた。

「責任とって三村クンと結婚します!」

その言葉を聞いた宮田は、今まで頭に上っていた血がサーッと引いていくのを感じた。

・・・以下、次週

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