THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行15 9/11


■初お茶くみ

システムが無事に動くことを確認した三村は、ようやくマフラーをはずそうとして言った。

「何か寒いですね」

「ああ、さっき空調を入れてもらったばっかりなんだ。とりあえず、応接室でお茶でも飲んでから出るとするか? あそこなら、ここより狭いからもう暖まってるだろう。・・・また風邪がぶり返すといけないし」

「・・・は、はい。じゃあ私、お茶入れてきます」

「すまんね」

お湯が沸く間、三村はひとり給湯室で考え込んでいた。

暮れに柳との間であったこと・・・、それを課長にどこまで話していいものか・・・?
自分の胸の内にしまっておくことだってできるかもしれない。けれど、それも何となくつらい。
課長に聞いてもらえれば、きっと気も楽になるし、今年も仕事を続ける勇気がわいてくるに違いない。
最も課長である宮田が聞いたら、部下である柳に直接、何か処罰めいたことをしてしまうかも・・・。それは決して三村の本意ではなかった。

お茶が来るまでの間、宮田は安定の悪いバレーボールをいったいどこに置いておこうか・・・ひたすら悩んでいた。

「課長、お茶入りました・・・。アレ? どうしたんです? そのバレーボール」

「いや、自宅の片づけしてて見つけたんだ。昼休みにでもみんなで、できたらなんて思ってね」

「やるって、どこでです?」

「屋上なんか・・・どうかな? 昔はよくやったもんだよ、昼休みに会社の屋上で」

「屋上って言っても30階以上あるんですよぉここ。たぶん、出られるようにはなってないと・・・」

「・・・そうかぁ」

「でも、そうだ! 隣の駐車場だったら、あんまり車が入ってないし・・・。できるかも知れませんねっ!」

「そうか!」

「課長、お茶冷めちゃいますよ」

「お! 今行く」

2人は応接室で、ようやくコートを脱ぎ、マフラーをはずした。


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