THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行15 3/11


■2000年問題勃発!

元旦の朝。宮田の会社では、2000年問題の泊まり込み組が眠たい目をこすっていた。

「・・・結局、何もなかったな。あ〜あ」

大あくびをしながら柳が言った。

「何かあったって、俺たちにはどうしようもない・・・けどな」

ほかの同僚たちも首をコキコキやりながら、だるそうにしている。

「そりゃま、そうだ。結局、何かあったって立ち会うだけだけどな・・・。まぁ、ヤレヤレだな」

「どうする? どっかで一杯やってくか?」

「こんな真っ昼間からじゃ・・・気分でないなぁ。それに・・・飲んだらスグに寝ちまいそうだ」

「それもそうだな。じゃあ2000年初のご帰還としますか」

初詣の人並みをぬって柳が浅草にある自分のアパートに戻ったのは、昼近くになった頃だ。

「いっけね〜、コンビニで弁当買ってくればよかった。何にも食うモンねぇよ」

そう独り言を言った柳がもう一度近くのコンビニまで出かけようとした時、留守番電話のランプが点滅していることに気がついた。

上着を着たまま靴も脱がす、万年布団の上を這うようにして枕元の電話までたどり着く。

三村から何かメッセージが入っているかも知れない・・・。
自分の気持ちをストレートに表現できたことには自分なりに満足はしていたものの・・・あの後、三村が休暇を早めにとって休んでしまうとは夢にも思わなかった。
やっぱり謝るべきだろうか・・・。でも、もっと伝えておきたいこともある。決してふざけたわけじゃない・・・と。

柳は少し緊張したおももちで留守番電話の再生ボタンを押した。
テープがまわり始める。
ピーッ!
「・・・あ、俊雄。あけましておめでとう。今年は会社で元旦迎えるんだったね。体に気をつけなさいよ。戻ったら電話してね」
ピーッ!
何だ、おふくろかよ・・・。いや待て! もう一件入っている。
ピーッ!
「柳?! 戻ったら至急会社に電話・・・いや、すぐ戻ってきてくれ。管理システムがエライことになってる。じゃ!」
ピーッ!

たった今、分かれたばかりの同僚の真剣な声が響いた。
ハッとした柳は布団の上に靴のまま構わず立ち上がると、再び部屋を出て行った。


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