THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行14 12/12


■宮田家の年末

1900年代が終わる。
それは1000年に一度の大きな変化に違いなかったが、受験生を抱える宮田家にとっては、さほど大きな問題ではなかった。

それでもテレビなどで、まるで世界中が大きく変化するようなことを言われると、何となく自分のところでも何かを変えなければならないような気になってくる。

水晶玉の一件を見てもわかるように、ある意味で影響されやすい宮田の妻が言った。

「来年は替えましょうか・・・畳」

「寝室のか? しかし、じゅうたんを敷いた上にベッドまで置いてある部屋の畳を替えても、あんまり意味ないんじゃないか?」

「じゃあ、ベッドやめにしてお布団にしてみたらどうです? 」

「う〜ん、それなら畳を替える意味はあるかもしれないけど・・・どうするんだ? ベッドは」

「捨ててもいいんじゃないかしら・・・だいぶ痛んでいるし。とてももらい手はないわね」

「捨てるって言っても、かなりお金とられるだろ? ああいう大きなモノは」

「だったら、あなた分解して燃やしてくださいな。木なんですから」

「じゃあ、来年なんて言わずに、この正月休みのうちにやっちゃった方がいいだろ? 結構、大仕事だぞ、そりゃ」

「ダメよぉ。畳屋さんの手配だってすぐにはつかないし・・・。だいたい、ここに越してきて一度も畳なんか替えたことないんですからぁ、どこに畳屋さんがあるのかだってわからないわ」

「そんなの電話帳調べりゃわかるだろ? 最近は需要が少なくて、案外すぐ来てくれるかもしれないぞ」

「だってぇ。畳替えたり、ベッド壊したり・・・そんな騒がしいことできないでしょおがぁ?! 良樹が受験勉強してるのに」

「・・・だったら最初から言うなよ」

「だから最初っから言ったじぁなぁい・・・来年は・・・ってぇ」

「・・・・」

年末の大掃除も今年は庭のまわりと、そこに置かれた小さな物置の中だけに限定された。おかげで楽な年末になった。

これで今年、宮田に残された最後の仕事は・・・紅白歌合戦を見ることだけだ。

・・・以下、次週(2000年1月2日)へつづく

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