THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行14 10/12


■宮田の実力

自宅のベッドに横になった宮田は、なんとなく寝つかれない。

木下や木下の娘の今後が気になることもある。しかし、それについては自分がいくら考えたところで、どうしようもない。
何と言っても三村との約束がはたせぬまま、とうとう今年最後の週末を迎えてしまったことが気がかりでならない。

「あなた・・・まだ寝てらっしゃらないんですか?」

隣のベッドから妻が声をかける。

「あ、ああ・・・つい考えごとをしてしまってな」

「考えごと? どんな?」

その言葉を聞いて頭をフル回転させ瞬時にシュミレーションする宮田。・・・答えは出た。

「いゃあ、大林専務のこと。・・・辞めるんだ、今年で」

「大林さんって、最初私たちの仲人をお願いしようとしてた?」

「うん」

「そうですか・・・。でも定年なら仕方ないでしょう?」

「いゃあ、専務はもう少し残ると思ってたんだ・・・実力者だし。社長にまではならないまでも副社長くらいにはなれる人だったんだけど・・・。ここんとこ体制が変わったからなぁ。実力者だったことが、かえって災いしたのかもなぁ」

「ふーん」

「今日、専務室の荷物運びを手伝って、帰りに一杯誘われたんだけど、木下の用事があったから断っちゃって・・・何か悪いことしたなぁ」

「あなたは大丈夫なんですか?」

「何が」

「会社の体制が変わって・・・」

「は、は、は。俺は大丈夫だよ、専務と違って別に実力者じゃないし」

「ああ、よかった」

「・・・・」

宮田はちょっと眉をひそめながら布団に顔をうずめた。


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