THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行14 8/12


■哀愁のマーガレット

マーガレットの仕事場では、柳のインタビューが続いていた。

「どこから来たの?」

「台湾」

「いつ来たの?」

「・・・半年クライ、ナルカナ」

「・・・両親は何してる?」

その言葉を聞いたとたん、ひたすらニコニコしていたマーガレットが立ち上がって柳を睨んだ。

「アナタ、何キイテル? 私ノ両親、アナタ関係ナイ! アナタ買ッタノ、私ノ時間ダケ」

その意外な行動に一瞬たじろいだ柳は思わず座り直して言った。

「悪かったよ。・・・君の言う通りだ」

冷静さを取り戻したマーガレットは柳の隣にペッタリくっついて座ると真剣な眼差しで柳を見上げる。

「ゴメンナサイ。オ客サンニ文句イッタリシテ。ゴメンナサイ」

薄着のマーガレットのぬくもりが伝わってくる。ドキリとした柳は正面を向いたまま答えた。

「いや、俺の方こそ・・・余計なこと言っちゃって」

「本当イウト、時々イルヨ。オ客サンミタイニ、何モシナイデ、話バカリシテル人。中年ノオジサンニ多イネ」

「中年のオヤジ並みかぁ、俺も・・・」

「アナタ違ウヨ。ダカラ私怒ッテシマッタ。普通ナラ、話ダケデ楽ダト思ウハズナノニ・・・」

憂いを含んだマーガレットの視線に吸い込まれそうになった柳だが・・・どうしてもそんな表情が三村とオーバーラップしてしまう。

「とにかく帰るわ、俺。別に気にしなくていいから・・・。お金もちゃんと置いていくよ、時間分」

「オ友達、ドウスルカ?」

「先に帰ったって言っといてよ」

「・・・ソウカ」

「じゃあ・・・頑張って、な」

「ウン、私ガンバル」

狭い廊下の向こうに柳が消えていくのを見たとたん、クルリと振り返ったマーガレットはニッコリと笑った。
通りかかったマネージャーが声をかける。

「アレ?  どうした?! 時間まだだろ?」

「オ話シテ帰ッチャッタヨ、アノオ客サン。デモ、チャントオ金モラッタカラ・・・」

「そりゃあ、よーござんした。じゃ、早速フロントに戻ってね」

「エー?! 時間マデ休憩シチャ、ダメカ?」

「かきいれ時ですよ〜、かきいれ時。どーか、ひとつ」

マネージャーはマーガレットの手から金をもぎ取ると、さっさと行ってしまった。
マーガレットは、ブスッとした顔をしながらフロントに出て行った。


Next■