THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行14 7/12


■山本の眼力

「ところで三村さんの方は・・・どうなの? あの人と?」

山本の言葉は、三村はドキリとした。・・・この人、私と宮田課長が2人で会っていること、どこまで知っているのだろう?
三村は少しトボけて聞き返した。

「あの人って・・・?」

「決まってるじゃん? 野球少年よ。・・・だいぶアナタにお熱みたいじゃない?!」

「・・・柳・・・クン、ね」

確かに、あれだけストレートに誘いをかけてくる柳のことを周囲が見逃すはずはない。ただ、特別に共通の思い出を持たない柳とのことを三村は真っ先に思い出すことはなかった。
大きな瞳をパチクリさせながら山本が言う。

「悪い人じゃないんだろうけどねぇ、何か子供っぽい感じもしちゃうのよねぇ」

「そ、そうね」

「でも、あーゆー男は、彼女とか、家庭とか・・・守るべきモノを持つと強いかもね。仕事は一生懸命やるタイプだし。・・・ただ、遊び相手としてはモノ足りない・・・けどねぇ」

確かに、そうかも知れない・・・と三村は思った。さすがに山本はダテに遊んではいない。そういう点では、自分よりかなり経験は上だ。
三村はこの際、自分が感じていることを素直に話してみることにした。

「正直言うとね・・・私、何となく怖いのよ・・・柳クンのこと。ものすごくストレートじゃない?! 彼。それはそれで最近の男の人には珍しいイイところだとは思うんだけど・・・。こっちは、そんな単純に決められないじゃない? YESかNOかなんて・・・。アイダがないのよ、彼の場合」

「・・・かもね。でも、そうなるとぉ・・・あとは調教次第・・・じゃない?」

「調教なんて」

「無論、アナタが嫌なら別よ。でもそうじゃなかったら・・・。つまり三村さん次第でどうにでもなるってコトね。それとも・・・ほかに好きな人でもいるのぉ?」

「・・・かわらないわ」

三村は少しうつむいて言葉をつぐんだ。山本は、さらに切り込んでくる。

「ははぁ・・・なんとなく、わかってきちゃったなぁ」

「何がよ?」

「つまりぃ・・・三村さんが一番よくわからないのは・・・自分自身のことなのよね」

年下の山本にそんな風に言われて、三村は少し心外な感じがした・・・が、否定できない。

「いろんなことを決めかねているうちに、どんどん年をとってっちゃうものね・・・。ゴメン、三村さんがそうだって言うんじゃないのよぅ」

「・・・いいのよ、別に」

「決めた・・・やっぱりアタシ、結婚しよ」

三村にとっては、ひどく自分勝手に見えていた山本が、今は自分に素直に行動ができるうらやましい人に思えてきた。


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