THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行14 6/12


■マーガレットの仕事場

柳が通されたマーガレットの"仕事場"は6畳ほどの大きさで、すぐ隣にシャワールームがついているだけの質素な感じの場所だった。

腰を落ち着かせるところと言えば、大きなバスタオルがかかったベッドしかない。やや抵抗感はあったが仕方なく柳は、そこに腰を下ろした。

あらためて部屋の中を見渡して柳は言った。

「おい・・・酒は?」

「オサケ? オサケ、無イヨ、ココ」

そう言うとマーガレットは、シャワーのお湯の出具合を確かめる。
正直言って、柳はこの手の"ストレート"な店に入るのは、今回が初めて。せいぜいギャバクラ程度なら誘われて行ったことはあるものの・・・酒がないと聞いて、緊張感を高めてしまう。

「サ、サ。脱イデ、チョウダイ。時間モッタイナイヨ」

マーガレットの手が柳の上着にかかった。あわてた柳は身を引きながら言った。

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待った」

「ナニ? アナタ、ヒョットシテ初メテ? デモ、ソノ格好・・・学生サン、違ウヨネ?」

柳はネクタイだけ緩めると少しブスッとして見せた。

「ハズカシイコト、ナイヨ。45分ノ間ダケ、私トアナタ、恋人ドウシ」

「・・・本当に恥ずかしくないのかぁ? 初めて会った男なのに」

「ウン、モチロン。コレ私ノオ仕事。サ、サ、脱イデヨ」

「いいから放っておいてくれよ」

「・・・イイヨ、別ニ。アナタ買ッタ、私ノ時間ダカラ。アナタ好キにシテ、イイヨ・・・」

マーガレットは今までの笑顔とは一転して、少し寂しそうな表情を見せた。
プロのプライドをキズつけてしまったかもしれない・・・と柳は思った。


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