THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行13 10/10 |
■サンタ苦労す 閑静な住宅街の一角に木下の女房の実家はあった。そして、幸いそのすぐ近くに小さな公園も・・・。 ひと気のない夜の公園。外灯の下のベンチに腰を下ろすと、プラスチックの冷たい感覚が伝わって来た。 袋の底から取り出したサンタクロースの衣装は実に立派で、このままサンドイッチマンでもできそうだ。 それにしても寒い。早いところ用事を済ませたかった宮田は、とりあえずヒゲと帽子、そしてサンタの上着だけをはおって立ち上がった。 「ズボンは・・・いいだろ?!」 ひとりゴトを言って、公園の出口に向かって5歩ほど歩くと、憂いに満ちた木下の顔を思い出して立ち止まった。 「・・・・」 再びベンチに戻った宮田は無言で紙袋からサンタのズボンを取り出すと、それを履きはじめる。 かなり太めのズボンではあったが、さすがに靴を履いたままだと、うまく足が通らない。仕方なく靴をぬいで再度ズボンを履き直そうとしていると、わきに置いてあった紙袋がガサガサと大きく揺れた。 見ると犬が袋をくわえている。 あわてた宮田は犬を追い払おうとするが、即座には立ち上がることができない。 犬は袋をくわえたまま走り出した。 ようやくズボンを履いた宮田は、サンタクロース姿のまま約200m全力疾走して、紙袋を奪取することができた。 途中で人に会わなかったのは幸いだったが・・・疲れた。 ヘトヘトになった宮田サンタは、木下の女房の実家の前まで来ると、やや姿勢を正してインターホンを押した。 「はい、どなたですか?」 間違いなく、木下の女房の声だ。・・・それは、よかったが・・・何と答えよう?? やがて宮田はささやくように答えた。 「・・・サ、サンタクロース」 |
・・・以下、次の日曜日へつづく
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