THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行13 9/10


■メリークリスマス

いつもの週末にもまして、クリスマス・イヴともなると、まだこの時間の電車は空いている。
最も自宅の方向とは反対の千葉方面の電車に乗った宮田には、いつもはどの程度この電車が込み合っているのか・・・知るよしもなかった。

椅子に腰掛けた宮田の両足の間には大きな紙袋が置かれている。
その中味をチラチラとのぞき見ながら、宮田は木下と会った時のことを思い出していた。

「・・・でサ、宮。このプレゼントの箱の底に衣装が入ってるから」

「衣装? 何の?」

「そりゃ、サンタクロースのに決まってるだろ」

「サンタクロースの・・・衣装。ひょっとして、それ着て渡すのか? プレゼント」

「当たり前だろ?! クリスマスなんだから」

「う〜む」

「毎年、そうやって渡してたんだ。今年だけサンタが来なかったら・・・可哀想じゃないか」

「・・・・」

木下の親心に免じて、ここは・・・やるしかない。
しかし、問題はどこでこの衣装を着るかだ。まさか駅のトイレで着替えて、木下の女房の実家まで歩くわけにも行かないし・・・。まず、家を確認してから・・・着替える場所を探すしかない。せめて近くに公園でもあるといいんだが・・・。


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