THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行13 4/10


■クリイマス・イヴ

結局、天皇誕生日に三村からの連絡はなかった。
今日は金曜日・・・クリスマス・イヴだ。

三村としては、忘年会の夜に言いかけたひと言で話の内容は伝わった・・・と思っていたのかも知れない。確かに伝わってはいたんだけれど・・・。
宮田には、もっとハッキリと聞きたいという気持ちがあった。あの、いじらしい表情で・・・。
それに、何と言ってもスケジュール調整。これが重要だ。

木下に頼まれた大きな紙袋を抱えて出勤するのは、なかなか大変だった。
満員電車でつぶされないように、ちょっと寒かったが今朝は通路のところに乗ってきた。
それに、見るからにクリスマス・プレゼントとわかる大きな包みを持って出勤したのでは、課のOL3人組からどんな目で見られることか・・・。

少し早めに会社に着いた宮田は早速机の下に紙袋を入れようとした。
紙袋はスッポリ収まってくれたが・・・そのままでは自分の足が入らなくなってしまう。

ふと机の上を見ると、有給の申請用紙が2枚目に付いた。
OL3人組のうち2人は今日休むようだ。
彼女たちは3人集まると異様なパワーをかもし出すが、バラバラになると実に素直なものだ。1人しかいないのなら、わざわざ紙袋を机の下に隠す必要もない。
宮田は、紙袋を机のわきに出して席に着いた。

それにしてもOL3人組の誰かが、有給の申請を出すのは決まって自分が席にいない時だ。別に与えられている権利だからそれでも構わないし、いちいち休んで何をするのかなんて詮索する気はないのに・・・。

詮索なんかしなくても自ら語ってくれるのは三村ただひとり・・・。
宮田にとっては、やっぱり可愛い部下だ。

9時5分前、可愛い部下は席に着いた。
と、荷物だけ自分の席に置いて、ややまわりを気にしているような仕草をしながら、宮田の席に近づいてくる。

「あの・・・。課長」

「あ! おはよう・・・三村クン」

三村の声を聞いたとたん、宮田の胸に少年のような高鳴りが戻ってきた。

「あの・・・今夜のこと・・・なんですけど・・・」

「!」


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