THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行13 3/10


■主婦の性

「いやぁ・・・掃除の邪魔になると思って・・・。それに、なんとなく、ここ落ち着くし」

宮田は準備していたセリフをすらすらと言った。

「寒くないですかぁ? そんなところで」

「毛布もあるし」

毛布は携帯電話を隠すためにも役立っていた。が、今鳴ったら困る。

「下は、もうお掃除済みましたから・・・。階段掃除して、そろそろ良樹も起こさないと」

「そうか・・・じゃあ」

と言って両手に本を抱えた宮田が立ち上がろうとすると、携帯電話が階段から転げ落ちた。

「あら、これ携帯電話じゃないですか」

妻はストラップ付きの携帯を拾い上げる。

「そうだよ・・・携帯電話・・・だよ」

宮田は直立不動だ。

「何なんです? このぶらさがってるの」

階段を下りながら宮田は説明した。

「良樹にもらったんだ、良樹に。ストラップ・・・。そう! どういう由来があるものなのか良樹に聞いてみようと思ってね。それで、ここまで持ってきていた・・・というわけサ」

妻の手から携帯を取った宮田は、そのままリビングへと逃げるように去って行った。
妻はやや怪訝そうな表情を見せたものの、階段のわきにホコリがたまっているのを見つけると、また吸い込まれるように掃除機をうならせはじめた。


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