THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行11 9/14


■クミの決心

クミの家も良樹と同じく川崎市内にある。
最寄り駅は、良樹の家とは違い、ひとつ川崎寄りだ。

良樹はクミを家の近くまで送るために、その駅でいっしょに降りた。

何故か押し黙って歩くクミ。
そんなクミの様子を見ながら、自分の勇気のなさを反省する良樹・・・。

薄暗い住宅街の一角にクリスマスの飾り付けを点滅させている家が見えた。

「派手だなぁ、あのウチ」

良樹は思わず、そう口にした。
イルミネーションを目にしたクミが足を止めて、良樹の方を見た。

「ねぇ良樹・・・」

「な、なぁに」

「楽しかったね、今日」

「うん、楽しかった」

ようやく会話ができて、ホッとした良樹を予想もしないクミの言葉が襲ったのは次の瞬間だ。

「あのね・・・・しばらく・・・会うのよそっか・・・」

「どうして?! 俺が男らしくないから・・・」

「ううん、そういうこと言ってるんじゃないの。お互い受験生だし・・・」

「受験は受験。別の話だろ。勉強だって一生懸命するさ、今のままでも・・・」

「ダメなの! 今のままじゃ・・・ワタシがダメなの・・・」

良樹は歯を食いしばって絶句した。

「ゴメンね。とにかく来年の春までは・・・」

良樹は何も言わずジッと目を閉じている。

「良樹・・・ねぇ、良樹、わかって・・・。良樹? どうしたの?」

良樹は、うつむいたまま両目を力いっぱい閉じながら言った。

「・・・歯が痛い」


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