THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行11 7/14


■クミの夢

元町から山下公園のわきを通る和製アビイロードを渡る。
枯れ葉を踏みしめながら歩く2人はジョイポリスに向かった。

ジョイポリスは巨大なゲームセンターだ。
入場料はとられるが、中を歩き回るだけでも楽しい。

入口の前にあるマクドナルドで簡単に昼食をとって、早速入った。
中は若いカップルだらけ。若いとは言っても良樹たちよりは少し年上のカップルが多いように思ったが、クミはもちろん、私服姿の良樹もとても中学生には見えなかった。

良樹が得意なのは、シューティングゲームだ。
襲いかかるゾンビを次々と撃ち倒すのが何とも快感だった。
とくに今日は、横で見ているクミが拍手をして喜んでくれるので、はりきってガンさばきを見せた。
ひょっとしたら西部劇好きの父親の影響も多少はあったのかもしれない。

ジョイポリスを出ると、日差しはかなり傾いていた。
2人は山下公園のわきを通って、みなとみらいへと移動をはじめた。

石川町から桜木町まで・・・歩けばけっこうな距離だ。
けれども今の2人にとっては何の抵抗もない。

歩きながら良樹は世理子おばさんの話を聞かせた。

「フリーでカメラマンやってるおばさんがいてね・・・。おばさんって言うには、まだ若いんだけど。独身で。オフクロの妹なんだ。いつも海外飛び回ってて・・・。落ち込んだところなんか見たことがないくらい元気」

「へぇ〜、フリーでやってるなんてスゴイじゃん」

「好きなことやって食っていけたらいいよなぁ」

「そうね・・・でも、やっぱ本人次第じゃない?!」

「クミちゃんは美容師になるんだろ。儲かってるらしいじゃん、美容師。カリスマとか言っちゃって」

「儲かってる人ばっかしじゃないよ。下働きしてる人たちなんかぁ、フツーの仕事よりずっとキツイんだから。給料も安いらしいし・・・」

「でも、なりたいんだろ?! 美容師」

「まぁね」

「いいよなぁ・・・自分がやりたいことが見えてて」

「何言ってんのよ、そんなモノ・・・まず高校に受かってから見つけなさいよ」

ちょっとしょげた顔を見せた良樹の腕に、クミは両手でしがみつくようにギュッと力を入れた。
良樹の顔は、すぐにほころんだ。


Next■