THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行11 3/14


■宮田の不運

うつむいたままコーヒーカップを見つめる三村が妙にモジモジしながら答えた。

「やっぱり、いいんです・・・。でも・・・相談しよう・・・かな」

そんな三村を目の前にした宮田の心臓は高鳴った。
ドキドキどころではない・・・もう、バクバク!

「え、遠慮は・・・い、いらないよ」

とは言うものの、宮田も何だか恥ずかしくて目を合わすことができない。
三村は、ひたすらはにかんだ様子だ。

「言ってごらんよ・・・どうせ、ここなら誰もいないし」

コーヒーカップに視線を落とし、そう口にした宮田は「しまった余計なことを言ってしまった・・・」と思った。そしてカップに残った3口分のコーヒーをイッキに飲み干した。

「課長・・・」

宮田の顔をジッと見た三村は決心したように言った。

「な、なんだい?」

宮田も三村の瞳を見つめて答えた。

ブルルルルッ!!

息を飲んだ宮田の内ポケットで携帯電話が激しく揺れた。

「すまん! 電話だ・・・。宮田だ、誰?!」

電話の主は木下だった。

「宮? 自宅に電話したら、まだ帰ってないっていうからサ」

宮田の全身に緊張が走った。ウチには木下の用事で帰るのが遅れると言ってあるのに・・・!

「ウチに電話したの? うん、いや、すまない。いいんだ」

「セイコから、そっちに何か連絡が入ったかと思って・・・」

「とくに何もない、今のところ」

「・・・そうか。心配だな。やっぱりマンションに行ってみるか・・・」

「木下・・・そりゃ心配だろうけど・・・。また、こんな時間にウチを空けたんじゃ奥さんが・・・」

「いや、カミさんは・・・さっき実家に戻ったよ。子供連れて」

「・・・そうか」

電話を切った宮田が急に自宅のことが心配になったのは無理もない話だった。


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