20010506
でじたけ流 教育論第48回 慢の

「やっぱり好きじゃなければだめです。
 好きこそものの上手なれというが、
 これは未来に続く基本の理念じゃないでしょうか。

 策では絶対大きくならんのです。

 命令されて働くのと
 自主的に働くのでは、まったく違うんです」

生涯、自分の好きなことに没頭し、人一倍、努力して・・・
たくさんの人たちを食べさせた本田宗一郎は『男の幸福論』の中で、こんなことを言っている。

自らを「欠陥だらけ」の人間と言ってはばからない本田だが・・・
中でも一番苦手だったのは・・・「我慢すること」だったと思う。

チャプリンやディズニー・・・
坂本龍馬や小林一三、そして本田宗一郎に盛田昭夫・・・
しかし、およそ歴史に名をとどめる偉人の中に「我慢して成功」した人などいない。

そりゃあ、貧乏を我慢して頑張ったような偉人はたくさんいるけど・・・
結局のところ、我慢できなかったから頑張ったと言う方が正しい。

「我慢できずに工夫した」人こそが新しい世の中を切り開いた成功者だ。

もちろん、工夫を認めさせるために並々ならぬ努力はしたと思う。
努力=我慢である場面はハタから見るとたくさんあるけど・・・
好きなことを成し遂げるためにしてる行動って・・・
やってる本人にしてみれば我慢でも努力でも何でもない。

よくメシを食うのも忘れて没頭する・・・ことはあるけど
腹が減ったの我慢してやってるなんて思ったら、とてもできるモンじゃない。

私が『先生の言うことなんか聞かなくていい!』の中で書いたコトで・・・
最も賛否両論を呼んでいるのが、実はこの部分でもある。

私は子供たちに決して「我慢」を強いることはしない。
食べたいものがあれば食わせるし、ほしいものがあれば買ってやる。

でも・・・
ポッピングやキックボード、竹馬に自転車・・・
買えるモノなんてすべて道具でしたかないから・・・
買ったからと言って「できる」ワケではない。

買ってやった道具を使いこなすことができるようになるかどうかは・・・本人次第。
ただ、目の前に道具がなければ練習するコトもできないだろう。

たいていの親や先生たちは・・・
「我慢を教えるのが教育」と頭ごなしに思っているフシがある。

でも、そういうコトが刷り込まれている大人に限って
本を買っただけで読んだつもりになっていたり・・・
パソコンを買っただけで何でもできるつもりになっていたりする。

「ほしがりません。勝つまでは」の精神がまだ脈々と流れてる。
勝つためにどうするか、を同時に教えられれば、まだいいけど・・・
勝ち方というのは冒頭の本田宗一郎の言葉を借りて言えば「策」ってことだよね。
結局、それだけじゃ勝てない・・・ってコトを
モノを手中に収めることだけが目的になってしまっている人には理解できないんだろう。

そもそも明治以来、脈々と続いている日本の学校教育というのは・・・
優秀な役人を育てるために作られたシステムだ。
優秀な役人というのは、つまり処理能力はあるけれど自己主張はしない人間ということだ。

だから、日本には・・・ピル・ゲイツやルーカス、スピルバーグのように人間は育ちにくい。

最近はずい分教育現場も時代に合わせて変わってきているとは言うものの・・・
現場の先生たちは、そういう教育を受けていないんだから・・・指導できるワケがない。

中には本当に「新しい教育」を考える優秀な先生もいるかも知れないが・・・
自分の中にずっと流れていたモノをいきなり捨てて新しい流れを作れと言われたって・・・
なかなか、できるモンじゃない。

子供に我慢を強いる時の親や先生の理屈を聞いていると・・・
確かに最もらしいコトは言ってるんだけど
つまるところ、大人たちが合理的に・・・
もっと言えば楽に過ごすために言ってるような気がしないでもない。

そりゃあ、ほしいモノを何でも買ってやるには金がいくらあっても足りないし・・・
とりあえず、やりたいコトを我慢させて
大人がさせたい次の動作にうつってもらえれば好都合だろうから。

しかし、本当に子供の能力を伸ばしたいと思ったら・・・
子供に付き合って、大人が我慢する方が大切じゃないか?!

大人が我慢している姿を見たら、子供たちだって、きっと我慢の仕方を覚えるだろう。

絶対につらがっちゃダメ。笑って対処できないと。
つらがっても、ちっともカッコよくないし・・・
第一、つらいコトなんか誰も真似しだかるワケがない。

無理に笑うこともないけど・・・そういう心持ちは大事だと思うな。
それができると、同じ人生も少しは楽しい気分になれる。

だいたい親や先生がうるさく言ってさせる我慢なんて本当の我慢じゃない。
我慢っていうのは・・・自分のやりたいコトを成し遂げるためにするモンだ。

大人がガーガー言って子供にさせる我慢なんて・・・
しょせん「長いモノにはまかれろ」ってことを教えているに過ぎない・・・と私は思うんだよね。

誰かの言う通りにさえしていれば食っていけるほど・・・これからの時代は甘くない。

実際、うちの子供たちの反応はどうかと言うと・・・
買ったらできるようになんなきゃならないってコトがそろそろわかってきたと見えて
かえって、あまりモノをほしがらない傾向にある。

買って使わなきゃ、そりは確かに無駄遣い。
だから・・・買わないのか
それとも買ってやったモノを使いこなすように指導してやるのか・・・

私は後者が「教育」だと思っている。

むろん、指導するためには・・・まず自分ができなきゃなんないけど、ね。

でじたけ流 教育論

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