第349回 |
ようやく新学期がはじまった。
新しいクラスと新しい先生。 子供たちにとっては期待と不安の入り交じる春だ。 カミさんが介護のパートに 週に何日が行くようになっているので、 春休み中、 子供たちだけを家に残すのは何となく不安だった。 中2になった長男は朝から部活に行ってしまうし、 残るのは小5になった長女と小2になった次男。 最も・・・ 私は自宅で仕事をすることもできなくはないし、 事務所も原付で5分程度の場所にあるから、 何かあったら駆けつけることもできるんだけど、ね。 春休みも終盤にさしかかったある日。 事務所で客先と電話中に携帯が鳴った。 見ると娘から留守電が入っている。 どうやら家の鍵を持たずに遊びに出てしまい、 家に入れずに困っているらしい。 出がけにあれほど「鍵持ってけ」と行ったのに。 仕方なく原付を飛ばして家に戻ると 家の裏手から娘が泣きそうな顔をして出てきた。 近くの公園で遊んでいて トイレに行きたくなって家に戻ったらしい。 ・・・そして、チビッてしまっていた。 娘は私の顔を見るなり泣き出した。 留守電に吹き込んだだけで、 私と会話はしていないから、 私がすぐに戻ってくるとは思わなかったんだろう。 悲しいことや辛いことがあっても、 わりと涙は我慢できるものだ。 ワッと涙が出てくるのは・・・ むしろ、緊張がほぐれてホッとした時だろう。 そういえば・・・ 親の顔を見て泣き出す・・・という場面は、 わりとよくテレビなんかでも見るよね。 子供が頼りにしているのは、 やっぱり親・・・だろうから。 親はいざという時、 いつでもヒーローになれるだけの 力を持っていなければならない。 パンツを替えた娘は 何事もなかったように、また遊びに行く。 そして私は・・・ 急いで事務所にトンボ帰りした。 見送られることなく、 助けられた方がサッサと行ってしまう。 そこが・・・ テレビや漫画のヒーローとは ・・・違うところ。 |