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							Episode No.059:インディラとインディラ 
						インディラが日本に来たのは、昭和24年(1949)。 
						まだ焼け野原が目立つ、終戦直後の東京の街並みをぬって、彼女は新しい家にたどり着いた。 
						ここ、上野動物園には、戦争の影響で動物たちの姿はまばらにしかない。彼女は、ここで一番体の大きな動物となった。 
						象のインディラは、当時のインド首相、ジャワハルラル・ネールが、動物がいない日本の動物園の状況を悲しんで、日本の子供たちにプレゼントしたものだ。 
						ネール首相は、日本に贈る象に、愛娘と同じインディラと名付けた。 
						一躍、動物園の人気者となったインディラは、その人気に応えるように容姿も、そして頭もいい象だったという。 
						以来、34年間、日本の子供たちの笑顔を毎日見て過ごしたインディラは、昭和58年(1983)に49歳で老衰によってこの世を去った。 
						インディラ死去のニュースを知ったネール元首相の娘インディラは、翌年、再び日本に2頭のメス象をプレゼントした。 
						アーシャ(希望)とダヤー(慈悲)と名付けられたこの象たちは、今も元気で上野動物園で子供たちを迎えている。 
						ネール元首相の娘インディラとは、昭和41年(1966)にインド首相になった、インディラ・ガンジー女史のことである。  |