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Fictional Talk No.041(990613)
架空対談 
味覚とは

A「日本の味とは・・・? いったいどんな味なんだ?!」

K「日本の味を知るには、まず日本人の心を知らんとな」

A「ガーン!! 日本人の心!!」

K「日本人に生まれたからといって日本人の心を知っているかというと・・・そうでない場合もある」

A「ヘッヘー! おれも学校の勉強はからきしだったからな。夏目漱石でも読んでみるか」

K「夏目くんと同じ下宿にいたのは、イギリス留学時代だったかの・・・」

A「え!! じっちゃん、夏目漱石と友だちなのかい?」

K「昔の学生は、よく勉強したもんだ。ワシも夏目くんに負けずに勉強したぞ。最も進んだ方向性は違ったが・・・」

A「じっちゃんは、いったい何を勉強したいだい?」

K「ワシが研究しておったのは、アミノ酸」

A「アミノ酸? 何か難しそうだな」

K「日本の味・・・となると、情緒の問題もあるが"味"だけなら科学的に分析できる」

A「本当かい?」

K「もちろん。味も化学反応によって起こっておるわけだから」

A「そりゃまあ、そうだろうけど・・・」

K「その結果、人間の味覚を科学的に分析すると、ウマ味のもとはグルタミン酸のソーダ塩であることをつきとめたんじゃ。・・・その抽出に成功して製造特許をとった」

A「それを使うと料理がうまくなるってわけかい?」

K「その通りじゃ」

A「そんな簡単にいくのかなぁ・・・」

K「それができたから、よく売れたぞ。・・・とくに高度成長期には内ブタの穴を広げてな、一回に多くでるようにしたんじゃ。あれは確か・・・若い女工さんのアイデアだった・・・かな。早くなくなるからたくさん売れる」

A「味なマネを!!」

K「いやいや、味なマネではない・・・"味の素"じゃ」


塩見味平(「包丁人味平」主人公/牛 次郎=原作 ビッグ錠=漫画)
池田菊苗(東京帝国大学教授/人類初の化学調味料"味の素"発明者)1864-1936


参考資料:「20世紀の発明・発見博物館」グループ・サイエンス21=編著 ワニ文庫=刊
     「21世紀こども人物館」小学館=刊

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