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Fictional Talk No.038(990523)
架空対談 
貢献とは

J「諸君、ガンビールノキというのをご存じかな?」

S「缶ビールの木だって? そんなのがあったら喜ぶヤツはたくさんいるだろうな」

M「ガンビールノキでしょ?! 確かアカネ科の木本(もくほん)性の常緑つる植物。東南アジアに分布していて、かなり古くから栽培されてる・・・んじゃなくて?」

J「さすがはリトルナース。よくご存じで。して、その効能は?」

M「そうね、葉や枝、樹皮の浸出液を煮つめて乾燥させたものがカテコールやタンニンを主成分とするガンビールと呼ばれる阿仙薬になるでしょ。収斂(しゅうれん)剤として、下痢どめや浣腸などの薬用に使われていたと思うわ」

J「正解! そして小生もまた、このガンビールを原料に取り入れておる。現地ではお茶の代用にもされるほど生活に密着しておる」

S「待ちねぇな、軍人さん。下痢どめといゃあ、元祖はオラっちだろうよ」

J「キミ、小生の服装は確かに軍服だが、軍人ではなく、外交官ですぞ。そのヘン、誤解のないように」

S「そんなモンはどっちでもいいやな・・・。だいたい、こん中で一番歴史があるのは、オラっちだろう? 生まれは明治36年。今年で御年96歳!」

M「歴史をひもとくなら私の方が長いですわよ。1894年生まれですもの」

S「そりゃあ、アメリカで発売された年だろう? 日本に来たのはオラっちが登場した、ちょうど10年後、大正に入ってからじゃないか。だいたい何でアメリカ生まれのおまえさんが帝国軍人の慰問袋の仲間入りしてたんだい?!」

J「まぁまぁ、いいじゃないですか・・・、お互い軍人さんのお役には立っていたわけだし、今だって活躍なされているんだから」

S「オラっちは筋金入りよ。何せ生まれが陸軍軍医学校だからな」

M「そんなことが何の自慢になって?!」

S「何だと、このアマ! オラっちの名前を見ろよ、征露丸・・・戦うために生まれてきた薬だぜ」

J「外交官の立場から言わせてもらえば、今の平和な時代には似つかわしくない名だね」

M「そうよ、ロシアを征するなんて・・・。だいたい今の名前は正露丸に変えたでしょ。正しいロシアよ、これどういう意味?」

S「てやんでぃ! おまえらみんな商品名のクセしやかって。オラっちの正露丸て名は最高裁の判決で一般名称と認められてるんだぜ。それだけ生活に浸透してるってモンだ。ざまぁみやがれ!!」


仁丹(清涼薬品 確かついこの間まで口に入る医薬部外品は仁丹だけだった)
正露丸(ラッパのマークのほか、正露丸という名称で販売されている薬は20数社のメーカーから販売されている)
メンソレータム(現在はロート製薬から販売されている)


参考資料:「戦時広告図鑑」町田 忍=著 WAVE出版=刊 ほか

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