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Fictional Talk No.027(990307)
架空対談 
中毒とは

H「・・・で、どんな具合かね?」

J「気分が・・・すぐれなくて」

H「フーム。これまで医者にかかったことは?」

J「顔も忘れるくらい。・・・しかしドクター、アンタ見たところ東洋人だが、英語うまいな」

H「異国で人を診るには、まずその国の言葉ができなければ話にならん。だから中国に渡った時には、行きの船の中で中国語を覚えたよ。着いた時には、そこそこ話せるようになっていたものだ」

J「そいつは大したモンだ。俺も日本語しゃべれるよ・・・デタラメだけど、サムライの真似は得意だぜ」

H「キミの口からサムライという言葉が出るとは驚いたよ。・・・では・・・繰り返しになるとは思うが基本的な質問をさせてもらうから答えてくれたまえ。・・・まず、タバコは?」

J「1日3箱くらい・・・かな」

H「酒は?」

J「・・・まぁ付き合い程度」

H「何か薬は飲んでるかね?」

J「薬!! コカインを毎日。それにマファナは週に4〜5回。LSDを週に10〜20錠。それと、メスカリン(幻覚剤)を定期的に・・・。でもヘロインはやらないよ」

H「何だねキミ?! 完全な麻薬中毒じゃないか」

J「確かに俺は中毒患者だ。自分の人生に対して。もっともっとという可能性に対して中毒なんだ。そいつを実現させるためには薬が必要なんだ。いわばライフスタイルみたいなモンだ」

H「そんなライフスタイルは身の破滅だよ、キミ」

J「ドクター! そういうアンタだって研究中毒だって聞いてるぜ」

H「そりゃ、私は貧しい農家の出身でハンデもしょってたから、大学出の優秀な人材に負けないためには、人一倍努力をする必要があった・・・」

J「それなら俺だって同じだぜ。生き馬の目を抜くショービジネス界で成功するには常人じゃダメなんだ」

H「成功のために命を縮めてもいいというのかね?」

J「だからサ、ドクター。俺たち同じだって!」

H「いや私は違うぞ。あの頃、電子顕微鏡さえ発明されてれば・・・!!」


野口英世(医学博士/自らが研究していた黄熱病によりガーナで死去)1876-1928 享年51歳
ジョン・ベルーシ(コメディアン/ブルース・ブラザースで知られる)1949-1982/3/5 享年33歳


参考資料:「世界の伝記・野口英世」関山英夫=監修 集英社=刊
     「ベルーシ殺人事件」ボブ・ウッドワード=著 井上篤夫=編訳 集英社=刊

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