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Fictional Talk No.018(990103)
架空対談 
爆発とは

A「人生が技芸の発明によって美しくなるのを快く眺めんことを願って1世紀・・・、1999年を迎えた人々の人生は、はたして美しく彩られているのだろうか?」

T「人生に彩りを添えるものは何か?! それが、とてつもなく大きなテーマだ」

A「それは人類が試行錯誤のうえに作り上げてきた発明、発見でしょう」

T「必ずしもそうじゃないンだな。モノを作り上げていくということは、同時に破壊することでもある」

A「確かに私も失ったものは大きい。私の工場が事故にあって、実の弟さえ失った。しかし、だからこそ、もっと安全性の高い発明品を生み出すこともできたのです」

T「創造しては壊し、壊してはまた創造するのが魂の仕事」

A「だから幾多の困難を乗り越えて、新しいステージに立つことが必要・・・」

T「必ずしも必要じゃないンだ! AとBの次にCが来るという方程式を導き出さないと気がすまないのは、現代人のエゴイズムにも通ずるモノであって・・・」

A「それじゃあ、どうやって発明や発見をすればいい? 結論を求めて進めるのが研究なんじゃあ?!」

T「AとBがぶつかり合うこと自体が大事なんだ! 矛盾を矛盾のままに取り込んで 対立させたままスパークさせるところに真の美しさが生まれる」

A「じゃ、あなたの言っている"美しさ"って何なんです?」

T「出会った時に血の中に力がふき起こるのを覚えた縄文土器や・・・」

A「縄文土器? あの教科書に出ている?」

T「教科書に縄文土器が紹介されたのは、私が縄文土器論を展開したからであって、それまで教科書の編纂人たちや役人どもは、あの感動を伝えようともしなかった」

A「役人や政治家たちが感動を伝えるのがヘタだということについては私も賛成します。彼らは自分たちに大切なことが何かはわかっても、人類に対して何が必要かということについては、まるでわかっていない。だから、私が築いた莫大な遺産をもとに人類に寄与した発明、発見を行った人々に対して賞を贈る制度を作っても、最初は受賞者が外国人だったために賞金が海外に流れるという理由だけで、政治家たちは式典への参加を拒否したのです」

T「頭で理解しようとしていたンじゃ、わからないことがある。何だコレは!! という驚きが必要だ」

A「それは、そうかもしれないが、やはり広く人々に理解されないことには・・・」

T「いいんだ、そんなコトは」

A「そう言ってしまったら、言いたいことが人に伝わらないのでは?」

T「この一言で充分、伝わる!! ・・・・芸術は爆発だ!!」

A「爆発? ダイナマイト何本分くらいの??」


アルフレッド・ノーベル(ダイナマイト発明者) 1833-1896 享年63歳
岡本太郎(芸術家)  1912-1996 享年84歳


参考資料:「日録20世紀 1901」講談社=刊
     「HINOKAGE ART LABORATORY」http://www.mnet.ne.jp/~emonyama/ ほか

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