Fictional Talk No.016
架空対談 自立とは
A「このページでは初の女性同士の対談ね、モーディ」
M「あなたと私は昔から、ずっと対話してきているから・・・今さらっていう気もするけれど」
A「確かに、そうね。生い立ちも過ごした少女時代の思い出も、美しいと感じた風景もいっしょ」
M「お母さんが天国にいる・・・という話を教会で聞いたこと、覚えてる?」
A「もちろん。天国ってどこにあるの?って聞いたら、上を指さすから、教会の屋根裏に天国があるんだと真剣に思ったわ」
M「そうそう、それならハシゴを使えば、いつでも会いにいけるって・・・。でも晩年、私たちの進む道はずい分変わってしまった」
A「お陰様で私は、たくさんの人に愛されて幸せをつかむことができたわ」
M「そんなあなたの姿を見て、私はずい分勇気づけられた気がするわ。今となっては仕方のないことだと思うけれど、私の晩年は決して幸せなものではなかったもの・・・」
A「自分が本当にやりたかったことで成功して、それと同時に幸せな結婚までしたあなたなのに?!」
M「牧師だった夫は誠実な人だったけど・・・時代が悪かったのね。牧師の妻としての生活だけでも大変だったけど、それはシッカリやったつもりよ。でも世間は、なかなかそう見てくれない。私の方が収入が良かったことで夫はプライドをキズつけられて、精神的にもすっかりまいってしまったの」
A「あなたは強かったと思うわ。よくやったわよ。38歳で最初の子供を産んで、子育てをしながら、自分の仕事も捨てなかった。精神的な病気にかかったご主人をかばって、牧師の妻としても何十年も頑張ったじゃない」
M「・・・あの時。私のまわりには、そう言ってくれる人はいなかったわ。ひとりもね。だから結局、私は興奮剤を飲んでは仕事をして、睡眠薬を飲んでようやく眠ることができるという悪循環を繰り返すことになってしまった。・・・死ぬまでね」
A「でも、あなたは永遠に生きている。世界中の子供たちといっしょにね」
M「いいえ、私が生きた辛い歴史なんて、もうどうでもいいことなの。それに生き続けているのは、私じゃなくて、あなたよ・・・アン」
■L.M.モンゴメリ(カナダの女流作家) 1874-1942 享年67歳
■アン・シャーリー("赤毛のアン"主人公) 1905- |