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Fictional Talk No.013

架空対談喜びとは

S「我が魂よ、木の葉のように、そこにすがりついてくれ。この幹が枯れるまで」

J「へへっ。おっちゃん! なかなか、いいこと言うじゃんか」

S「"おっちゃん"ではない。我が名はウィリアム・シェイクスピア」

J「しぇいくすぴあ? 知らねぇな。けど、おっちゃんには変わりねぇ、だろ?」

S「口の悪い若者だ。おまえを育てた親の顔が見てみたい」

J「親の顔? そんなもの、この俺だって知らねぇよ」

S「おまえは孤児か? それは失礼した。しかし、逆境が人に与える教訓ほど、うるわしいものはない」

J「うるわしいだって?! 笑わせんなよ。俺が逆境から教わったことと言えば、信じられるのは自分の腕だけってことだぜ」

S「人間は、悪事を行う道具を目にすると、つい悪事を行いたくなるものだ」

J「そいつは悪事を悪事と思う余裕のあるヤツのセリフだな」

S「どんなに荒れ狂う嵐の日にも時間はたつのだ」

J「ははっ、そりゃそうだ。たとえ地獄の少年院に入っててもな」

S「人間の一生は、善と悪とをより合わせた糸で編んだ網なのだ」

J「だからどうした? え? だから何だってんだよ! オイ」

S「・・・・神々は、我々を人間とするために、何らかの欠点をお与えになる」

J「いちいち、うるせぇな。説教はたくさんだ。俺は自分のやりたいようにやる」

S「おまえは恋を知らぬのか? 恋はまことに影法師。いくら追っても逃げていく。こちらが逃げれば追ってきて、こちらが追えば逃げていく」

J「まどろっこしい言い方だな。・・・だけど、そいつは恋いばっかりじゃないぜ」

S「おまえは何を知っているというのか? 他人の傷痕をあざわらうのは、傷の痛みをしらぬ者だけ」

J「俺は俺のことを知ってる。だけと説明する気はないね」

S「毛虫と蝶は、まるで違う。だが、その蝶も元は毛虫だ」

J「おっちゃん、そんに理屈こねてて、いったい何が楽しいんだ?」

S「我が喜びは東方にある。おまえの喜びこそ何だ?」

J「俺の喜びは・・・へへっ、やっぱり、リングかな?」

S「・・・おまえ、名は何という?」

J「俺かい?! 俺の名は、ジョー。矢吹ジョー」


ウィリアム・シェイクイピア(劇作家) 1564-1616 享年52歳
矢吹ジョー(ボクサー/"あしたのジョー"主人公) 享年?歳


参考資料:「シェイクスピア名言集」小田島雄志=著 岩波ジュニア新書=刊
     「あしたのジョー」高森朝雄(梶原一騎)=原作 ちばてつや=漫画 講談社=刊

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