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Fictional Talk No.009

架空対談家柄とは

「よ〜し〜こ〜さ〜ん、コッチ向いてぇ〜♪」

「誰がよしこさんじゃ!! 余はエジプトの女王クレオパトラじゃ」

「そう、ファラオ立てないでくださいよ」

「ファラオ立てる???」

「え〜これは何故おかしいかと言うと、"ファラオ"と"腹を"を引っかけたシャレなんですが、出し方を間違えると笑ってもらえないで怒られちゃうんでぇ。どーも。あ! エジプトって言えば、たいへんお暑い国でぇ、何でもニワトリがゆで卵を産むという・・・」

「おもしろいことを言う者じゃ・・・。その方、名を何と申す?」

「その方って言うと、この方? アタシは林家三平と申します。英語で言うと林家はジャングルハウス。三平はスリーガス!! あ! クレオパトラ様は英語が通じる方ではありませんでしたなぁ。普段は何語でしゃべっておられたんで?」

「ギリシャ語じゃ。余が生を受けたプトレマイオス朝は、もともとギリシャの出身。ただ、余はラテン語、ヘブライ語、エジプト語など、地中海に面した国々の言葉は、みな話せたぞ」

「それはタイヘンな勉強家でいらっしゃる。その美貌で知力も抜群とは!! 髪はカラスの濡れ羽色。額は三国一の富士額。眉毛は東山の三日月眉毛!! ウチの家内なんて鉛筆で眉毛書いてあるもんスから、夏なんか太陽で溶けて顎ヒモみたいんなっちゃってぇ・・・」

「美しく思ってくれるのは女として決して悪い気はせぬが、余が美しさだけでローマの英雄の目をくらましたと思われては心外じゃ」

「スタイルがまた抜群!! ウチの家内なんて胸に長靴が2つぶら下がっているようなモンでぇ・・・、夏、シミーズ1枚でいると、はみ出してブランブランしちゃって、後ろから見ると手が4本あるみたい・・・」

「余が悪女に思われているのは、オクタビアヌス以降のローマ人たちが作り上げた意図的なものじゃ。余は純粋に父、プトレマイオス12世の意志を受け継いでエジプトを守ろうとしただけじゃ」

「アタシも、こう見えても代々続いた噺家のウチに生まれたもんスから、父、七代目林家正蔵の教えは、よく守って精進したつもりスよ。ホントにもう大変なんスから」

「余の時代には、そのために血肉を分けた姉弟たちと戦わなければならぬこともあった・・・」

「しかし、こう言っちゃナンですが、クレオパトラ様は茶目っ気もたっぷりでいらっしゃる。ナイショでカエサルに面会するために、じゅうたんにくるまって行って驚かしたりして・・・。今度は、戦争の時に兵隊をじゅうたんにくるんで敵にブツけるんじゃないかと思いましたよ。これがホントの"じゅうたん爆撃"」

「バカを申すでない!! 余は命がけだったのじゃ」

「こんなコトばっかり言ってるから信用がなくなっちゃうんですけど、これでもアタシ、修業時代には、ずい分、働いたんですよ。ホントに。大道具さんの手伝いまでしたりして。真打ちの息子だってぇと、よくお坊っちゃんなんて言われるんスけど、修行時代には自分より下はないと思って働いたんスから・・・」

「結局、どんな家柄に生まれようと、本人次第と言うことじゃ」

「苦労したからって、男は泣いちゃいけません。男が泣いていいのは一生に一度、ガマぐちを落っことした時だけ」

「余も決して泣き顔は見せなかったぞ。それゆえ、みじめな気持ちで生きるより死を選んだのじゃ。コブラに自らを噛ませてな・・・」

「そんなぁ、もう、体だけは大事にしてくださいよ、ホント!! 死んじゃった人に言ってもしょーがないんスけど。しかし、天下のクレオパトラ様をひと噛みで絶命させるとは!! そのコブラは強いですな。きっとヘビー級に違いない」

「・・・・・」

「どーも、スイマセン」


参考資料:「林家三平」ねぎし事務所=ビデオ制作 東芝EMI
     「世界の伝記 クレオパトラ」吉村作治=監修 集英社=刊

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