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Fictional Talk No.006

架空対談修行とは

M「ささ、こちらへ参られよ」

D「はじめまして。お招きにあずかって光栄です」

M「いやいや、オモテを上げてくだされ。貴女のような美しい方に、ひざまづかれては・・・」

D「失礼いたしました。ですが、これが私たちの習慣なのです」

M「さようか・・・。拙者も、この世界に入って長いもので、貴女の晩年のご活躍については存知あげておるが、その自然な立ち振る舞い、さぞや名のある上流階級のご出身とお見受けいたす」

D「確かに私の生まれ育った家は代々続く名家。2人の姉の後に生まれた私は、跡継ぎになる男であることが望まれていましたが、ごらんの通り。その後、弟は生まれましたが・・・」

M「ウム、3人目の子供だったとは奇遇。拙者も3人目、上には兄と姉がおった。最も実母がはっきりしないので、はたして本当に血の繋がった兄弟であったかどうかさえ定かではない。物心つく頃、実母はすでにおらなかったし、父上も私が7つの時には亡くなったでなぁ。13で修行の旅に出てからというもの故郷を懐かしむことさえなかったものじゃ」

D「その切ないお気持ちは痛いほど私にもわかります。娘として、そして母としても・・・。私が6歳になった頃、母は家を出て行きました。8歳になる春には正式に離婚。やがて新しい母がやってきましたが、その母との距離をうめることはできませんでした」

M「故郷を出た拙者は全国をまわって、とにかく修行に明け暮れたものじゃ。想いを寄せるおなごもおったが、とうとう独り身のまま生涯を過ごしてしまった」

D「幼い頃にできた心の隙間を埋めるために、修行を積んだのですね?」

M「そうは思っておらん。少なくとも拙者は。・・・時代だったのじゃ。強くなければ生き残れない、そんな時代だったのじゃ」

D「貴方様の恵まれたその体格、そして太くたくましい腕・・・。さぞかし、お強かったでしょう」

M「あの時代にあって、62歳まで生きることができたのは、確かに強かったからかも知れぬ。だが、過去をふり返って反省すれば、連戦連勝できたのは兵法を極めたからではなく、ほんの少しばかり拙者の素質が相手に勝っていたことに加えて、ある時は相手の実力が不充分だったからに過ぎぬ。それに気づいたのは、拙者が50を過ぎてからのことじゃ・・・」

D「あいにく私の人生は、それほど長くはありませんでしたが、実に多くのことを学びました。女性である私は貴方様のように武力で相対することはありませんでしたが、違う意味で戦いの連続でした」

M「!! さよう。悟りの境地は真剣に戦った者のみが知るものじゃ」

D「そういえば、まだ貴方様のお名前をうかがっていませんでした」

M「これは無礼いたした。拙者は宮本武蔵。二刀流の使い手じゃ」

D 「二刀流?!・・・失礼、二刀流という言葉はあまり好きになれません」

M「それは考え過ぎじゃ、ダイアナ殿。貴方はもう、すべてのわずらわししさから解放された身じゃ」


Mは、宮本武蔵
Dは、ダイアナ妃についての文献をもとに構成した。


参考文献:「宮本武蔵 おもしろ ものしり 雑学事典」鈴木健二=編 講談社=刊
     「ダイアナ物語」綾野まさる=著 ハート出版=刊

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