Fictional Talk No.005
架空対談・性分とは
T「はじめまして、先シェイ。今日は、先シェイのありがたいお話を聞きにまいりました」
G「天国にひとりでいたら、これより大きな苦痛はあるまい。よし、話そう。で、何を聞きたいのかね?」
T「せんシェイは、9つの時にはフランス語、イタリア語、英語、ギリシャ語、ラテン語も話せる天才児だったと聞いてますが、本当ですか?」
G「ドイツ語も話したよ。ドイツ人だからね、私は」
T「それはスゴイ。どうやって勉強すれば、先シェイみたいになれるのでしょうか?」
G「それほど勉強したという意識はない。興味のなくなるところ記憶もまたなくなる。好奇心こそが原動力だったのだ。だから若い頃には夜遊びも好きだった」
T「それじゃあボクとおんなじだ」
G「フランクフルトの美しい街並みは、きめ細かな都市計画によって成されている。私が生まれた頃には、建物の高さから窓を取り付ける位置まで決められていたものだ。我が家の2階には父の書斎があった。私は若い頃、夜な夜な玄関のドアをそっと開けると街に繰り出したものだが、その姿は2階からは、ちょうど死角になって見えない。父が2階から玄関を見張るためには部屋の横に窓がついている必要があったが、街の決まりでその位置には窓を付けることはできない。法律家だった父は八方手をまわして、とうとうその場所に窓をつけられるように街の規則を改訂してしまった。私を見張るためにね」
T「ボクはオツムは弱かったけど、これでも強いボクサーだったんです。あんまり考えなかったから、打たれても打たれても進んでいく、カッコ良くいえば肉を切らせて骨を切るタイプの・・・」
G「それは、鉄の忍耐、石の辛抱で勝ち得た結果だ」
T「そんな、たいそうなモンじゃありませしぇん。おかげでパンチドランカーになっちゃったし。でも、こんなボクサー時代のボクをモデルにした漫画もできました。"あしたのジョー"っていう。・・・結構、人気あったんですよ、漫画の方はボクと違ってカッコ良かったから」
G「キミの胸から出たものでなければ、人の胸をひきつけることは決してできない」
T「ボクはいつでもボクしか演じることはできましぇん」
G「人はそれぞれ特性を持っていて、それを脱することができない。しかも、自分の特性のために、しばしば最も無邪気な特性のために、破滅する者が少なくない」
T「あ! せんシェイ。そりは、まさにボクのことです」
G「で、君は?」
T「た〜こ、で〜す!!」
※Gは、ゲーテ
Tは、たこ八郎に関する文献から構成した。 |