Fictional Talk No.001
架空対談・努力とは
三「"天才は努力である"という言葉は、いわば成り上がり者の哲学であると思うんです。僕は」
エ「なるほど。私は学校時代も落ちこぼれで、正規の教育をまったく受けてはいない。しかし成功した」
三「人間は、場合によっては楽をすることの方が苦しい時があるでしょう。その証拠に何十年もの間、会社や役所でジミな努力を重ねてきて、そこだけに自分の生きるモラルを発見していた人は、定年退職と同時に生ける屍になってしまう」
エ「で、君は努力ではなく、いったい何が必要だとお考えかな?」
三「貴族的であることです。本当の貴族は、努力より身についたもの、生まれつきのものが重んじられてきたのです」
エ「貴族的・・・という表現についてはどうかはわからないが、"生まれつき"という点においては私も大いに共感しよう。私自身、発明にいたるすべての準備ともいうべき情報は、前世で蓄えてきたとさえ考えておる。一般に霊と呼ばれる電子集団と交信できる装置さえ、私は開発を試みた。最もこれは完成を見なかったがね」
三「しかし"天才は1%の才能と99%の努力"と言ったのは、貴方自身ではありませんか?」
エ「それは私の82歳のバースデーの時のスピーチを居合わせた記者たちが、勝手にそう解釈して新聞に載せただけのことでね。私が本当に言ったのは"1%のヒラメキがなければ、99%の努力も無駄になる"ということさ」
※「三」は三島由紀夫、「エ」はトーマス・エジソンに関する文献より参照した。 |