Episode No.088:豆腐の衣替え
湯豆腐が実においしい季節となった。
ヘルシーな食材の代表格で、手軽な家庭料理から高級料理まで、バリエーションが豊かな豆腐は人気が高い。
先週の土曜日、ある会合の予定があって、幹事が東京・青山にある豆腐専門店に予約を入れようとしたが、いっぱいで断られてしまった。
週休2日制のために、最近は土曜日なら比較的空いている店も多いというのに、豆腐専門店は例外らしい。
江戸中期には『豆腐百珍』というグルメ本も出されていたという豆腐は、料理のバリエーションが豊富であると同時に、四季を通しておしいく食べられるというのも豆腐の特長。
某食品会社が東京近郊の主婦にアンケート調査を行ったところ、気温20度を境に"冷や奴"と"湯豆腐・鍋物系"に変える家庭が多かったという。
この四季による調理方法の違いに対応するために、多くの豆腐メーカーでは、夏用の豆腐と冬用の豆腐では製造方法を変えている・・・ということをご存じだろうか?
原料そのものは変わらないが、仕上がりの"硬さ"を微妙に調整しているという。
夏は、そのまま食べてちょうどいいように、やや柔らかめ。そして、冬は煮込んでも型くずれしないくらい、しっかりとした仕上がりにする。
春はゴールデンウイークあたり。秋は10月10日の体育の日あたりが、豆腐業界の"衣替え"の時期だという話。
ところで豆腐と納豆は、奈良時代に遣唐使によって中国から日本へ渡って来た時に、勘違いから名前が逆に伝わったというが、はたして現在、中国では豆腐のことを納豆と読んでいるかどうかは定かではない。麻婆豆腐に使われているのは、納豆じゃなくて、やっぱり豆腐だし???
ちなみに"やっこ"という呼び名は、もともと江戸時代の武家の下男を差す言葉で、当時、豆腐1丁は現在の4倍ほどもあって、それを包丁で縦横に切り分けた感じが、"やっこ"が着ていた半天の市松模様に似ていたから、だとか。 |