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Episode No.086:師走の床屋

なじみの床屋に行って来た。

大将の話では、12月も中頃になるとかなり混み始めるが、今頃だと、まだ普段の変わらないという。
最も平日の夕方だから空いていたということもあるが、やっぱり土日は並ぶことになるだろう。

ねじりん棒とも呼ばれる、床屋の看板が、なぜ赤青白の縞模様なのか・・・というルーツについては、以前、本で読んだことがあるので知っていた。

その昔、床屋の前身は、中世ヨーロッパで生まれた刃物を扱うサービス業。公衆浴場で、髪を整えると同時に、当時信じられていた"瀉血(しゃけつ)"とよばれる悪い血を抜く健康法を行っていた。その後、髪専門の床屋と外科医に別れて発達。あの赤青白の縞模様は、そんな昔のなごりで動脈、静脈、包帯を表しているというワケ。

さすがに床屋の大将は、プロの理髪師だけに、この話は知っていた。

「そうです。だから理髪師の"師"は、栄養士なんかの"士"と違って医師の"師"と同じなんです」

理容師学校では、こういう歴史のところからキチンと教えるらしい。

ところで髪を洗う時、床屋の場合は座席の前に据え付けられた流しに向かって、前屈みになって洗ってもらうが、美容院では椅子を倒して、仰向けになって洗う。
これはどういう理由なのか? 以前、やはりこの床屋で若い理容師に聞いたことがある。

「それは、女性の場合は化粧をしているんで、顔に水がかからないように、そうしてるんですよ」

なるほど、合点がいった。
合点がいかないのは、その時、そう答えてくれた若い理容師のその後。
そいつは今、鎌倉・鶴岡八幡宮の境内でリンゴ飴を売っている。

テキ屋の歴史については・・・、教わってないだろうなぁ。たぶん。


参考資料:「つい誰かに話したくなる雑学の本」日本社=刊 ほか

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